大阪 国立国際美術館 「ウィーン・モダン」展
日が経つのが早くて、ちょっと油断しているとあっという間に10月の下旬になってしまいました。
愛知県豊田市で開催されていたクリムト展も観に行ったのですが記事が間に合わなかったので、国立国際美術館の「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展('19.8.27~12.8まで。観覧料1600円)を先に記事にすることにします。

この展覧会は、サブタイトルに「世紀末への道」とあるように、19世紀末ウィーンがどのように形成され、どのような時代であったかを美術品を通して歴史的にたどるような展覧会です。
展示品のほとんどがウィーンミュージアム(旧ウィーン市立歴史博物館)の所蔵品であることを考えても、美術展というよりは博物館展に近いように思われます。
300点以上の美術品・工芸品が勢揃いしている豪華で立派な展覧会です。
オーストリア・ウィーンの近代化は、女帝マリア・テレジアから始まります。
展覧会の章立ても細かく設定されているのですが、最初はやはりマリア・テレジアの肖像画です。
額にも絵が嵌め込んであるのですが、その絵は幼い息子のヨーゼフ2世でした。
大きくて額も立派な絵でした。

19世紀末のウィーン形成までの大まかな流れとしては、18世紀後半マリア・テレジアが啓蒙思想を掲げて近代化を図り、知識を一般人にも広めました。
次のヨーゼフ2世も啓蒙専制君主制をとり、更に国内の改革を推し進めていたのですが、国としては政情が不安定で、市民は自分達の日常生活に目を向けはじめたのが19世紀前半のビーダーマイアー時代。
フランスの2月革命がヨーロッパ中に飛び火してオーストリアでは3月革命が発生しウィーン体制が崩壊。
宰相のメッテルニヒが追放され有力な権力者不在の状態で、今まで抑圧されていたオーストリア帝国内で民族運動が活発化するが、フランツ・ヨーゼフ1世が18歳で即位し、絶対主義帝国として他民族の支配を続行。
今まで城壁を作ってウィーンの街を守っていたが、敵がいなくなったことからフランツ・ヨーゼフ1世の治世に壁が取り除かれ、リンク・シュトラーセという環状道路が設けられ、通り沿いにいろんな建造物が建てられます。
ですが、それらの建物は古代ギリシア風であったり、ルネサンス様式であったり、ゴシック様式であったりと、昔の様式を手本とした懐古(歴史)主義的なものばかりであったため、そういう古いものを乗り越えて新しいものを作る、近代の芸術は「美」が基準ではなく、「新しさ」が基準となる「ウィーン・モダン」の時代になります。
具体的には、クリムトは保守的なウィーン造形芸術協会を脱退(分離)し、「ウィーン分離派」を結成し新しい造形表現を追求します。
展覧会では4章以降が、クリムトを中心とした分離派の作品の展示がされていきます。
前半も面白いのですが、やはり興味は4章以降になります。
ウィーン分離派は、しっかり物事を見つめ、それを独自の方法で表現しようとしたため、抽象画にはならないところが私は好きです。
美が基準ではないといいながら、クリムトの作品は美しいのですよねぇ。
生老病死も描いて不気味な面もあるのですがそれをメインにはしておらず、はっきりとクリムトの美意識を感じます。
今回、展示されていた「愛」は、ウィーンで初めて観た時から惹きこまれた作品です。

交際相手だった「エミーリエ・フレーゲの肖像」も色がきれいです。
クリムトの作品は、細かい模様や文様を描いて色も多彩なのですが、配色に上品さがあります。
キンキラキンであってもけばけばしさはありませんものね。
シーレの絵画は、実際に作品を観るとゴツゴツ感はありますが、生命感がすごくて輝きがあります。
この人の絵の良さは印刷では伝わりにくいですね。
展覧会では、分離派以降ウィーンでの表現主義の芸術の紹介もありました。
実は今回の展覧会の中で私が一番興味を持ったのが、この章4-6-2、4-6-3です。
この辺りは、音楽と美術の交流が強く、今回とくにシェーンベルクとゲルストルの作品が珍しかったです。
この2人の人間性については以前から興味を持っていたので、今回まとまって作品を観られたのが良かったです。
シェーンベルクの音楽の良さは私はあまり理解できないのですが、絵については音楽よりはわかりやすかったです。
ココシュカは独自路線を行っており、この画家の絵は美より衝動性の方が強く、「新しい」という意味ではウィーンモダンの時代に最も適していたのかもしれません。
この後、表現主義は暗い世相を反映してかちょっと不気味なものが増えていきます。
展覧会では、その手前で終わっていたので、きれいなものをたくさん観たという満足感で終われました。
展覧会場を一巡するだけで、ウィーンの近代化をざっと見ることができるのですが、19世紀末の時代背景は奥が深くいろいろ面白いので、また本などでおいおい自分の知識を補足していこうかなと思いました。
国立国際美術館
住所:大阪市北区中之島4-2-55 TEL:06-6447-4680
開館時間:10時~17時(金曜は19時まで。入館は閉館の各30分前まで) 休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌日休館)、展示替え休館あり

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愛知県豊田市で開催されていたクリムト展も観に行ったのですが記事が間に合わなかったので、国立国際美術館の「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展('19.8.27~12.8まで。観覧料1600円)を先に記事にすることにします。

この展覧会は、サブタイトルに「世紀末への道」とあるように、19世紀末ウィーンがどのように形成され、どのような時代であったかを美術品を通して歴史的にたどるような展覧会です。
展示品のほとんどがウィーンミュージアム(旧ウィーン市立歴史博物館)の所蔵品であることを考えても、美術展というよりは博物館展に近いように思われます。
300点以上の美術品・工芸品が勢揃いしている豪華で立派な展覧会です。
オーストリア・ウィーンの近代化は、女帝マリア・テレジアから始まります。
展覧会の章立ても細かく設定されているのですが、最初はやはりマリア・テレジアの肖像画です。
額にも絵が嵌め込んであるのですが、その絵は幼い息子のヨーゼフ2世でした。
大きくて額も立派な絵でした。

19世紀末のウィーン形成までの大まかな流れとしては、18世紀後半マリア・テレジアが啓蒙思想を掲げて近代化を図り、知識を一般人にも広めました。
次のヨーゼフ2世も啓蒙専制君主制をとり、更に国内の改革を推し進めていたのですが、国としては政情が不安定で、市民は自分達の日常生活に目を向けはじめたのが19世紀前半のビーダーマイアー時代。
フランスの2月革命がヨーロッパ中に飛び火してオーストリアでは3月革命が発生しウィーン体制が崩壊。
宰相のメッテルニヒが追放され有力な権力者不在の状態で、今まで抑圧されていたオーストリア帝国内で民族運動が活発化するが、フランツ・ヨーゼフ1世が18歳で即位し、絶対主義帝国として他民族の支配を続行。
今まで城壁を作ってウィーンの街を守っていたが、敵がいなくなったことからフランツ・ヨーゼフ1世の治世に壁が取り除かれ、リンク・シュトラーセという環状道路が設けられ、通り沿いにいろんな建造物が建てられます。
ですが、それらの建物は古代ギリシア風であったり、ルネサンス様式であったり、ゴシック様式であったりと、昔の様式を手本とした懐古(歴史)主義的なものばかりであったため、そういう古いものを乗り越えて新しいものを作る、近代の芸術は「美」が基準ではなく、「新しさ」が基準となる「ウィーン・モダン」の時代になります。
具体的には、クリムトは保守的なウィーン造形芸術協会を脱退(分離)し、「ウィーン分離派」を結成し新しい造形表現を追求します。
展覧会では4章以降が、クリムトを中心とした分離派の作品の展示がされていきます。
前半も面白いのですが、やはり興味は4章以降になります。
ウィーン分離派は、しっかり物事を見つめ、それを独自の方法で表現しようとしたため、抽象画にはならないところが私は好きです。
美が基準ではないといいながら、クリムトの作品は美しいのですよねぇ。
生老病死も描いて不気味な面もあるのですがそれをメインにはしておらず、はっきりとクリムトの美意識を感じます。
今回、展示されていた「愛」は、ウィーンで初めて観た時から惹きこまれた作品です。

交際相手だった「エミーリエ・フレーゲの肖像」も色がきれいです。
クリムトの作品は、細かい模様や文様を描いて色も多彩なのですが、配色に上品さがあります。
キンキラキンであってもけばけばしさはありませんものね。
シーレの絵画は、実際に作品を観るとゴツゴツ感はありますが、生命感がすごくて輝きがあります。
この人の絵の良さは印刷では伝わりにくいですね。
展覧会では、分離派以降ウィーンでの表現主義の芸術の紹介もありました。
実は今回の展覧会の中で私が一番興味を持ったのが、この章4-6-2、4-6-3です。
この辺りは、音楽と美術の交流が強く、今回とくにシェーンベルクとゲルストルの作品が珍しかったです。
この2人の人間性については以前から興味を持っていたので、今回まとまって作品を観られたのが良かったです。
シェーンベルクの音楽の良さは私はあまり理解できないのですが、絵については音楽よりはわかりやすかったです。
ココシュカは独自路線を行っており、この画家の絵は美より衝動性の方が強く、「新しい」という意味ではウィーンモダンの時代に最も適していたのかもしれません。
この後、表現主義は暗い世相を反映してかちょっと不気味なものが増えていきます。
展覧会では、その手前で終わっていたので、きれいなものをたくさん観たという満足感で終われました。
展覧会場を一巡するだけで、ウィーンの近代化をざっと見ることができるのですが、19世紀末の時代背景は奥が深くいろいろ面白いので、また本などでおいおい自分の知識を補足していこうかなと思いました。
国立国際美術館
住所:大阪市北区中之島4-2-55 TEL:06-6447-4680
開館時間:10時~17時(金曜は19時まで。入館は閉館の各30分前まで) 休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌日休館)、展示替え休館あり

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