明石市立文化博物館 「広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展」('11.2.5 Sat)

今日は明石駅から徒歩5分ぐらいのところにある明石市立文化博物館に行ってきました。

こちらでは「広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展-歌麿・写楽から幕末バラエティーまで-」展('11.1.4~2.6まで。観覧料800円)が開催されています。
この展覧会、面白かったですよ~。
歌川広重の「東海道五拾三次」(保永堂版)と同じく広重の「五十三次名所図会」、葛飾北斎の「東海道五十三次」(小判シリーズ)、広重の五十三次名所図会とほぼ同じ場所、同じ構図で大正時代に撮った写真、その4枚を1組にして、江戸から京都までの東海道五十三次の全部を紹介しています。
それに加え、歌麿や写楽、国芳や芳年、この前神戸市立博物館で開催されていた貞秀の作品まで展示されており、まさにタイトルどおり幅広く盛り沢山の内容になっています。

今回メインの東海道五十三次案内は、並べてみると広重の「東海道五拾三次」(保永堂版)が一番面白いですね。
旅の人情、旅情がよくでているのです。
例えば、雨の描写で有名な「庄野」は、急な夕立で急いで走り出す旅人たちに、気は焦るけれど体力的にそんなに急げない駕籠かきたち、自分ではどうしようもない駕籠の中の客はこぶしを握って「早く、早く」と内心緊張している様子などが伝わってきます。
そんなに大きくない画面に登場している人物全ての心理描写までが表現されているのですから、すごいです。
当時から評判だったのもうなづけました。
北斎の五十三次の方は、旅行者の立場ではなく、そこに住んでいる人を中心に描かれていますので、広重の絵と一緒に見ると北斎単独で見るより面白くて、こういう組み合わせで展示されたのはすごく良かったと思います。
ちなみに北斎の五十三次は、広重の保永堂版より30年前に作られたそうで、ところどころ抜けているところもあります。
その穴を埋めたのが、北斎の長女美予の娘婿・柳川重信です。
この画家はその後美予と離縁して大阪に住んで、上方の絵師に影響を与えたそうです。
ちょっと名前に記憶がないのですが、上方浮世絵展に出ていたかもしれないので、その時の図録を見てみようと思います。
保永堂という出版社のことも解説に書いてありました。
保永堂の出版者は竹内孫八という人だそうです。
蔦屋重三郎みたいに、最近では出版者も取り上げられるようになり面白いですね。
そういえば、広重の保永堂版の五十三次の36番「御油」は、真ん中の通りをはさんで両脇に店があり、右の店の宿札には摺師や彫師の名前が書いてあり、出版スタッフが紹介されています。
店の壁には大きな「竹之内坂」と書かれており、左の店の暖簾には「大當(おおあたり)や」の字が。
保永堂の紹介と大ヒット御礼という意味なんですって。
広重と保永堂・竹内孫八の蜜月時代の作品なんでしょうね。
保永堂は、小さな出版社だったので大手出版社仙鶴堂とはじめは共同で出版していたそうです。
ですが仙鶴堂が火災などで延焼してしまったため、保永堂単独になったそうです。
仙鶴堂の火災の折、広重の版木なども燃えてしまったため、このシリーズは後摺りや異版が多いのですって。
何枚か、参考図として初摺りと後摺り、異版が並べて展示されていましたが、描かれている人数が増えていたり、昼と夜が違っていたりと、全然違うのでびっくりしました。
好みもあるでしょうが、私は初摺りの方が好みかな。
広重の作品を見て、ゴッホは模写をして勉強をしましたという証拠の絵も展示されていました。
ゴッホの本物の絵を借りてくるとなると別の展覧会になるので、参考図として写真だけでしたけどね(笑)。
模写といっても、ゴッホが描くとゴッホの色になるんだなぁと感心しました。
ところで、東海道五十三次といえば、弥次さん喜多さんです。
三代豊国の弥次喜多の顔を描いた作品がありましたが、とくに弥次さん、太りすぎでイメージと違います(笑)。
どっちか一人は太くても、もう一人は細くないと、二人ともお相撲さんみたいに太っていたら到底旅に出るようには見えませんもんね(笑)。
その他の作品は、美人画、役者絵、風景画から幕末の劇画、滑稽絵までサラッとですが、浮世絵の流れを掴めるような作品が展示されており、時代の流れも感じられる工夫がされていました。
いろいろ展示されていましたが、やはり今回のメインは、誰もがなじみのある東海道五十三次、見に来るお客さんもいっぱいで、みんな楽しそうでした


もちろん私たちも楽しかったです(笑)。
この展覧会、良かったですよ

明日(2/6)までですので、浮世絵ファンの方はお見逃しなく。
明石市立文化博物館
住所:明石市上ノ丸2-13-1 TEL:078-918-5400
開館時間:9時半~18時半(特別展開催期間中の金・土は19時半まで。入館は各閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝日、特別展開催期間中を除く)、年末年始(12/29~1/3)
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