映画 「終着駅 トルストイ最後の旅」('10.9.18 Sat)

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 シネ・リーブル神戸で、「終着駅 トルストイ最後の旅」('10年21本目)を観てきました。

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 この映画は、トルストイと妻ソフィヤの関係を中心に、トルストイの晩年を描いたお話です。
 今年はトルストイの没後100年だそうです。

 トルストイって、中学か高校の時ぐらいの大昔に小説を読んだだけなので、その時の彼の思想や小説が書かれた時代背景など全く理解していなかったと思います。
 なのでロシアの文豪というイメージしかなかったのですが、単なる小説家ではなく、結構実践的な思想家だったのですね。

 トルストイは伯爵家に生まれた貴族で、広大な土地を所有し作家として成功もしていたので裕福だったのですが、宗教や民衆の素朴な生き方に惹かれ、独自の思想に基づく新しい宗教活動を始めます。
 それによりトルストイの文学と思想に心酔する人たちがトルストイの領地に多くやってきて、トルストイの理想の実現する新しい村が作られ、トルストイもその活動に心血を注ぎ込みます。
 その活動では、得られた財産は皆のものという考え方で、トルストイは自分の死後の著作権を放棄しようと考え、それを遺言書に書こうとし、彼の下に集まったトルストイアンたちもそれを成就させようとしますが、妻のソフィヤがそれを断固阻止しようとあの手この手で妨害します。
 結果、トルストイは家を出てしまいます。

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 映画は、トルストイアン側のスパイ役としてトルストイの秘書になった若く純粋なワレンチンの目を通して、トルストイ夫婦を見つめていきます。
 ワレンチンは、結構中立的な立場に立って事態を見ていきますので、妻のソフィヤに対しても偏見の目を持っていません。
 なので、映画を観ている私たちも、ソフィヤを世間でいう夫の財産を独り占めにする強欲な女性とは思いませんでした。
 というか、いくら夫の理想が高邁であっても、子どもが12人もいれば妻としては夫の財産を守ろうとするのは当然であり、また愛があればこそ夫の著作物も含めて他人に渡したくないと思うソフィヤの気持ちがわかるような気がしました。
 
 この夫婦の悲劇は、トルストイの目は外に向いているのに、一方、ソフィヤは家族を含めて「家」という内なるものから視点を変えることができずにいるために起こったのではないかと思います。
 実際には、トルストイがどれだけソフィヤに自分の目指すものについて語り、協力を求めたのかはわかりませんが、自分の理想を実現するには、まず自分の妻を説得し、夫婦ともども目的に向かって進んでいけるようにするべきだったのではないかと思います。
 自分の妻すら説得できないようなものでは、理念は尊くても実が伴わず、単なる理想主義になるような気がしますけどね。

 トルストイの思想は、信奉者によって更に理想化され、最後の方はもしかして、トルストイの方が遅れまいと必死だったのではないかとも思いました。
 映画の中のトルストイアンは、トルストイのいう思想と外れた行動をしようものなら、本人でさえその行動を抹消されそうな勢いでしたもんね。
 コワイ、コワイ。

 映画では、身近だった愛する夫がどんどん偉くなり、自分から遠ざかってしまうような気がして、どうにかして自分の元に繋ぎ止めようとするソフィヤの感情がうまく描かれていました。
 トルストイの自分への愛情を信じきっているからこそ、自分の感情をそのまま夫にぶつけることができるのですが、その一方では、こんなことをしている私のことを嫌いにならないでという気持ちを込めて、自分のことを愛しているかと何度も確認します。
 その女心を見事に表現したのは、ヘレン・ミレン。
 さすがです

 また、トルストイはソフィヤへの愛情と、自分の理想を貫こうとする周囲を含めた意志との板ばさみになり、苦悩している姿がよく表現されています。
 クリストファー・プラマーが演じていますが、お顔もよく似てますね(笑)。

 2人の間には確かな愛情があるのにうまくいかないものだなというワレンチンの感想は、私の感想でもありました。

 良い映画だと思いますが、トルストイのことを少し知ってから観た方がより理解できるのではないかと思います。
 どれぐらい事実(史実)に基づいているかはわかりませんが、説得力のあるストーリーでした

終着駅 トルストイ最後の旅 2009年 ドイツ・ロシア ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント マイケル・ ホフマン監督 112分
 トルストイの実物映像ってたくさん残っているのね、Ms.れでぃの勝手な映画採点:70点
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