京都 承天閣美術館 「若冲と近世絵画」展
大阪にまたもや緊急事態宣言が出てしまいました。
案の定というか予測通りだったので、7月中に美術館等をまわりました。
緊急事態宣言はうれしくないのですが、まだワクチンも打てていないし、暑い時期でもあるので、宣言の要請通り当面はおとなしく自粛していようと思ってます。
ブログ記事のストックはそれほど多くはないので、間隔をあけながら今までに行った分で書いていきます。
せっかく自粛しているのに、宣言後も遊びまわっていると思われるのは悔しいので、毎回「この記事は7月以前に行ったものです」という表示を出しますが、はじめから「ちゃんとわかっているよ」と温かい目で見てくださる皆さまは気にしないでくださいね。
さて、京都では承天閣美術館と福田美術館・嵯峨嵐山文華館で伊藤若冲関連の展覧会が開かれています。
順番に感想を書く予定にしていますが、今回は承天閣美術館です。

こちらの美術館は相国寺の中にある美術館です。

相国寺の敷地は広く、塔頭もたくさんありますが、敷地内は大きな庭みたいです。
蓮池もありました。
この奥に美術館があるのですが、木に勢いがある季節ですので美術館が見えませんね。
この入口に続く道の木は紅葉が多く、秋は見事です。
春や新緑の季節は明るい色になりますし、冬はさっぱりとして清々しく、美術館に行く楽しみを増やしてくれます。

こちらで開催されているのは「若冲と近世絵画」展('21.4.29~10.24まで。拝観料800円)です。
相国寺の僧であった梅荘顕常(大典)禅師が若冲の禅の師であったため、若冲の作品を相国寺は多く所蔵しています。
有名な若冲の動植綵絵は釈迦三尊像(図像)とともに元々相国寺に寄進されたものですが、明治の廃仏毀釈令により敷地がなくなりそうになったため天皇家に献上し、その下賜金で敷地を維持することができたそうです。
動植綵絵は釈迦三尊像とともに、観音懺法会(かんのんせんぽうえ)の時に掛けて法要されていたそうですが、現在は釈迦三尊像の脇仏である文殊・普賢菩薩像に御本尊を白衣観音像(図像)として、コロタイプ印刷の動植綵絵30幅を掛けて行われているそうです。
複製品を掛けての法要だなんて気の毒にと思いますが、今年(2021年)の7月に若冲の動植綵絵は国宝指定にもなりましたし、たま~にお里帰りする以外は、もう相国寺の手元を遠く離れて戻ってくることはないのでしょうね。
その釈迦三尊像は今回展示されていました。
色がとてもきれいで、衣も細かく丁寧に描かれていました。
他にも若冲の作品はあったのですが、今回の展覧会で興味深かったのは絵ではなく、若冲と親交のあった大典禅師の文章です。
今まで大典禅師の名前は知っていてもあまりピンとこなかったのですが、今年のお正月に「ライジング若冲」というNHKのドラマを見て、にわかに大典禅師のことをリアルに思い浮かべることができるようになったので、大典禅師関連の資料に興味津々です。
若冲は相国寺の塔頭に生前墓を作り、その墓碑に大典禅師が文章を書いていて、拓本が取られています。
「若冲寿蔵銘拓本」というのですが、石に書かれた字は摩耗するので、よくぞ拓本にしてくれたという感じです。
漢字ばかりですし、内容を全部覚えてませんが、出生のこと、狩野派に学んだこと、どのように練習したかなどが3幅分も書かれていて、若冲の人間像ってこれが元になっているんだと思いました。
大典禅師の文章集の版本もあり、そこには天明の大火について書かれている文章もありました。
北は相国寺から南は東本願寺まで火事になり、罹災戸数は8900戸、神社37社、寺院201寺が被災し、京都にいた宮家や公家の避難場所など具体的なことが書かれていました。
『相国寺から東本願寺まで!?それって、京都の市中はほぼ全部火事ってことやん!こわ~!!』と思っていたら、円山応挙が天明の大火を思い出して描いたという「七難七福図」の天災の巻の展示もあり、その地獄絵図のような様相は本物だったんだと更に怖くなりました。
復興後の相国寺の杉戸絵を描いたのは原在中です。
ちょっと劣化が進んでいたのは残念ですが、それだけ長く災害がなかったということですから、少しホッとしますね。
大典禅師の書簡集である「小雲棲手簡」では、漢文で書かれた字の横に朱字で意味の解釈が書いてあり、若冲がお中元に素麵をもらったらしく「コウブツ(好物)ジャ」と書かれてました。
若冲は素麺が好きだったのかとちょっと微笑ましく思いました(^^)
大典禅師の文章は基本漢文で読みにくいですが、漢字を拾って読むだけでも結構わかるところがあり面白いです。
絵は今までにも何回か観たものが多かったですが、今回は大典禅師が書いた文章で若冲や天明の大火について知れたことが収穫でした。

今回の展覧会では、窓に若冲の鶏がいました。
絵だけでなく、大典禅師から見た若冲の姿も知ることができる展覧会でした。
良かったです。
文章が長くなりましたが、お付き合いをありがとうございました。
次回は2~3日後に福田美術館の展覧会について紹介予定です。
またよろしくお願いします。
承天閣美術館
住所:京都市上京区今出川通烏丸東入上ル相国寺門前町701 TEL:075-241-0423
開館時間:10時~17時(入館16時半まで) 休館日:展示替え期間、年末年始
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緊急事態宣言はうれしくないのですが、まだワクチンも打てていないし、暑い時期でもあるので、宣言の要請通り当面はおとなしく自粛していようと思ってます。
ブログ記事のストックはそれほど多くはないので、間隔をあけながら今までに行った分で書いていきます。
せっかく自粛しているのに、宣言後も遊びまわっていると思われるのは悔しいので、毎回「この記事は7月以前に行ったものです」という表示を出しますが、はじめから「ちゃんとわかっているよ」と温かい目で見てくださる皆さまは気にしないでくださいね。
さて、京都では承天閣美術館と福田美術館・嵯峨嵐山文華館で伊藤若冲関連の展覧会が開かれています。
順番に感想を書く予定にしていますが、今回は承天閣美術館です。

こちらの美術館は相国寺の中にある美術館です。

相国寺の敷地は広く、塔頭もたくさんありますが、敷地内は大きな庭みたいです。
蓮池もありました。

この奥に美術館があるのですが、木に勢いがある季節ですので美術館が見えませんね。
この入口に続く道の木は紅葉が多く、秋は見事です。
春や新緑の季節は明るい色になりますし、冬はさっぱりとして清々しく、美術館に行く楽しみを増やしてくれます。

こちらで開催されているのは「若冲と近世絵画」展('21.4.29~10.24まで。拝観料800円)です。
相国寺の僧であった梅荘顕常(大典)禅師が若冲の禅の師であったため、若冲の作品を相国寺は多く所蔵しています。
有名な若冲の動植綵絵は釈迦三尊像(図像)とともに元々相国寺に寄進されたものですが、明治の廃仏毀釈令により敷地がなくなりそうになったため天皇家に献上し、その下賜金で敷地を維持することができたそうです。
動植綵絵は釈迦三尊像とともに、観音懺法会(かんのんせんぽうえ)の時に掛けて法要されていたそうですが、現在は釈迦三尊像の脇仏である文殊・普賢菩薩像に御本尊を白衣観音像(図像)として、コロタイプ印刷の動植綵絵30幅を掛けて行われているそうです。
複製品を掛けての法要だなんて気の毒にと思いますが、今年(2021年)の7月に若冲の動植綵絵は国宝指定にもなりましたし、たま~にお里帰りする以外は、もう相国寺の手元を遠く離れて戻ってくることはないのでしょうね。
その釈迦三尊像は今回展示されていました。
色がとてもきれいで、衣も細かく丁寧に描かれていました。
他にも若冲の作品はあったのですが、今回の展覧会で興味深かったのは絵ではなく、若冲と親交のあった大典禅師の文章です。
今まで大典禅師の名前は知っていてもあまりピンとこなかったのですが、今年のお正月に「ライジング若冲」というNHKのドラマを見て、にわかに大典禅師のことをリアルに思い浮かべることができるようになったので、大典禅師関連の資料に興味津々です。
若冲は相国寺の塔頭に生前墓を作り、その墓碑に大典禅師が文章を書いていて、拓本が取られています。
「若冲寿蔵銘拓本」というのですが、石に書かれた字は摩耗するので、よくぞ拓本にしてくれたという感じです。
漢字ばかりですし、内容を全部覚えてませんが、出生のこと、狩野派に学んだこと、どのように練習したかなどが3幅分も書かれていて、若冲の人間像ってこれが元になっているんだと思いました。
大典禅師の文章集の版本もあり、そこには天明の大火について書かれている文章もありました。
北は相国寺から南は東本願寺まで火事になり、罹災戸数は8900戸、神社37社、寺院201寺が被災し、京都にいた宮家や公家の避難場所など具体的なことが書かれていました。
『相国寺から東本願寺まで!?それって、京都の市中はほぼ全部火事ってことやん!こわ~!!』と思っていたら、円山応挙が天明の大火を思い出して描いたという「七難七福図」の天災の巻の展示もあり、その地獄絵図のような様相は本物だったんだと更に怖くなりました。
復興後の相国寺の杉戸絵を描いたのは原在中です。
ちょっと劣化が進んでいたのは残念ですが、それだけ長く災害がなかったということですから、少しホッとしますね。
大典禅師の書簡集である「小雲棲手簡」では、漢文で書かれた字の横に朱字で意味の解釈が書いてあり、若冲がお中元に素麵をもらったらしく「コウブツ(好物)ジャ」と書かれてました。
若冲は素麺が好きだったのかとちょっと微笑ましく思いました(^^)
大典禅師の文章は基本漢文で読みにくいですが、漢字を拾って読むだけでも結構わかるところがあり面白いです。
絵は今までにも何回か観たものが多かったですが、今回は大典禅師が書いた文章で若冲や天明の大火について知れたことが収穫でした。

今回の展覧会では、窓に若冲の鶏がいました。
絵だけでなく、大典禅師から見た若冲の姿も知ることができる展覧会でした。
良かったです。
文章が長くなりましたが、お付き合いをありがとうございました。
次回は2~3日後に福田美術館の展覧会について紹介予定です。
またよろしくお願いします。
承天閣美術館
住所:京都市上京区今出川通烏丸東入上ル相国寺門前町701 TEL:075-241-0423
開館時間:10時~17時(入館16時半まで) 休館日:展示替え期間、年末年始
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