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京都 承天閣美術館「柴田是真の漆×絵」展('10.5.3 Mon)

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 この日は京都の美術館巡りに行きました。
 まず最初は、相国寺境内にある承天閣(じょうてんかく)美術館です。
 こちらでは、「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」展('10.4.3~6.6 日曜まで。入館料1000円)を開催しています。

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 門から美術館の玄関までは、お庭になっていて、新緑がとてもきれいでした。
 こちらのお庭は、もみじが多くて、もみじの季節はすごくきれいでしょうね。

 さて、柴田是真(しばたぜしん)の展覧会ですが、以前に「美の巨人たち」で「花瓶梅図漆絵」という作品を紹介していたのです。
 一見、梅を挿した花瓶の絵が板の上に描かれているように見えるのですが、実は和紙に木目を描いて板のように見せ、その上に花瓶を描くというだまし絵的な作品であり、漆を使ってでは、それはかなり難しい技術と根気がいる作品だと紹介されてました。
 是非実際に観たいと思い、今回その作品も展示されると知って楽しみにしていた展覧会です

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 展覧会を観てみたら、「花瓶梅図漆絵」に限らず、どれもスゴイ!!

 是真って、凄い!!と思いました。

 この展覧会のキャッチコピーが「見よ!この超絶技巧を。若冲の次は是真だ!」となっていて、相国寺は昔、若冲の「動植綵絵」を所蔵していて(現在は皇室コレクション所蔵)、2007年に承天閣美術館で若冲展を開催したので、「そのまんまやん。」と思っていたのですが、若冲の次は是真だと言いたい気持ちがよくわかりました。
 是真も、妥協をせず、凝りに凝ってる作品ばかりなんですもの

 是真は、幕末から明治にかけて活躍した江戸生まれの漆芸と日本画を得意とする職人であり、芸術家です。
 11歳から蒔絵を学び始めたのですが、19歳の時には既に仕事の注文がくるぐらい上達しており、蒔絵をするには下絵も描けなければと、16歳から習いだした絵の修行のために、京都に留学したそうです。
 日本画の才能は、京都でも認められ、留学中に妙心寺の塔頭・大雄院の襖絵を完成させました。
 是真が京都に留学したのは、24歳から27歳のわずか3年ですよ。
 それでお寺の襖絵を任されるなんて、すごいですよね。
 
 今回の展覧会では、漆芸品と絵画の両方が展示されていたのですが、漆芸品の中には絵画性を、絵画の中には漆芸を取り入れており、それはそれは見事でした

 是真の漆芸作品は、漆芸自体の技術を魅せる作品と、図柄やデザインに凝った作品があります。

 前者の作品の代表としては、「柳に水車文重箱」(チラシ左)でしょう。
 青海波塗の川に、蒔絵や漆絵・素彫りの草花、水車の塗りなど、この一つの作品に漆芸の美が凝縮されている感じで、もううっとりするほど美しかったです。

 「蕗に蕗の薹図角盆」も、錆絵に金銀蒔絵を交えてシブイ美しさだったな~。

 「闇夜桜扇面蒔絵書棚」は、まさに闇夜というぐらいきれいに漆を塗ってるからこそ、螺鈿の青や紫がより光って美しかったのだと思います。

 「稲穂に薬缶角盆」は、黒漆の作品が多い中、赤漆のヤカンがすごく鮮やかで目を惹きました。
 蓋には金の稲穂、注ぎ口には銀の藁、取っ手にはキリギリスがいて、秋の収穫のお祭りの時に使われていたのではないかと想像できる、素朴ですが楽しい華やかな美しさがある作品でした。

 後者の、構図やデザインの面白い作品もいろいろあるのですが、「円窓雛人形印籠」はとくに印象深かったです。
 印籠を家の壁と見立てて、そこに丸い窓をつけ、その奥に三段飾りの雛人形が飾ってあるのです。
 ドールハウスの中を覗き込むような感じなのですが、それを平面上でしているのがすごいですよね。
 それに外の壁の部分には、桜の花が描かれ(蒔絵され)、春に自分が道を歩いていて、ふと目にした窓からお雛様が見えたという状況を設定しているようです。
 (お雛様と桜の組み合わせということは、旧暦ということになりますので、明治6年以前に作られたものなのでしょうか?)
 たった1つの印籠で、見る人にそこまでの場面を容易に想像させることのできる世界を作り上げていることに、驚愕してしまいます。

 「茄子硯箱」も、表に茄子、そして蓋裏には鈴虫、内部には硯の上に虫食いされた茄子が飾られています。
 美味しそうな茄子だったので、鈴虫が食べたという設定なのでしょうか(笑)。

 絵の方も、このような洒落っ気やウィットに富んだ作品が多いんですよ。

 「瀑布に小雀図」という掛軸は、滝のところに迫り出している崖から、雀が下を覗いているのですが、もう少しで雀は下に落ちそうです。
 絵そのものはそこまでなのですが、表装や掛軸に木が描かれており、もしかしたら雀は滝の下を見ているのではなく、表装の木に飛び移ることを考えているのかもしれません。
 そういうだまし絵的なところが面白いです。

 この記事の最初に紹介した「花瓶梅図漆絵」も、まさしくだまし絵ですもんね。

 「瀑布に鷹図」という2幅の掛軸は、だまし絵ではないんですが、左幅に鷹、右幅には滝の水面に自分(鷹)の顔が映っており、それを鷹が見つめているという面白い構図になってます。
 「わぁ、鷹が自分の顔を見てるわ」と、思わず楽しい気持ちにさせてくれるので、是非チェックしてくださいよ

 あと、足を滑らせたのか、岩場から落ちちゃってる亀がいますし、滝の音がうるさいのか、耳をふさいでる猿もいます。
 どれもユーモラスですよ

 紙に描かれた漆絵は、茶色がかった色調になり、少し枯れたような雰囲気を醸し出すのですが、どれも渋くていい感じです。
 日本画家としても認められているだけあって、絵自体もものすごく上手なんで、皆さんも「ほ~」と感嘆する作品がきっとみつかると思いますよ。
 是非とも、ご自分の目で見てみてくださいね。

 是真の作品からは情景が伝わりますし、その情景は茶目っ気たっぷりで、超絶技巧ながら堅苦しさ感じさせません。
 その辺が江戸っ子の粋なのかもしれませんね。

 アメリカのエドソン夫妻のコレクション70点と日本所蔵の20点を合わせ計約90点の展示(一部展示替えがあるようです)、見応えがありますし、工芸品と絵画の両方が楽しめる、お得な展覧会でもありますので、皆さんも是非足を運んでみてくださいね。
 オススメですよ

 そうそう、図録は2200円です。
 実物は漆の質感が美しいのですが、光の反射で見えない部分もあります。
 ですが、図録はその細部も見ることができるので、良かったですよ

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 外に出ると新緑のもみじが輝いていました。
 ピンボケしてますが、もみじの花も咲いてましたよ。
 是真なら、この春の美しさを漆でどう表現するのかな?
 きっと、さりげなく、さも普通に描いてるように見せかけて、実は普通の人には想像もつかないような超絶技巧を駆使して是真の世界を作り上げるんだろうなと思いながら、美術館を後にしました

相国寺承天閣美術館 「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」展
 住所:京都市上京区今出川通烏丸東入上ル相国寺門前町701 TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
 開館時間:10時~17時(入館16時半まで) 会期中無休
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