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大阪 あべのハルカス美術館 「福富太郎の眼」展

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 あべのハルカス美術館で開催されている「コレクター福富太郎の眼」展(’21.11.20~'22.1.16まで。観覧料1500円)を観に行ってきました。
 チケットは早くに買っていたのですが、観に行かれたブロガーさんにお聞きしたら、平日でも結構混んでいたとのことだったので夜に行ってきました。
 この美術館は月曜以外の平日は夜8時まで開館しているので、仕事帰りでも寄れるので助かります。

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 美人画のコレクターで有名な福富太郎さんのコレクション展なので、良いということはわかっていたのですが、この展覧会は想像以上に良かったです。
 そして想像以上に観たことがある作品が多くて、これらは福富太郎コレクションだったのかと驚きました。

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 お写真はチラシの拡大ですが、福富太郎さんは戦後キャバレーを多数経営されていた実業家で、私の子どもの頃、テレビにもよく出てられました。
 実家にあった鏑木清方の絵が戦争で燃えてしまったというのがきっかけで清方の絵を蒐集するようになったとのことで、鏑木清方の作品の展示から始まっていました。

 鏑木清方の作品は、画家本人に見せて、描いた当時のお話を聴くということを福富太郎はしていたとのことで、自分の好みでない作品も購入していたのではないかと思うような、ただきれいなだけの美人画もありましたが、展覧会全体を見てみると、気持ちが表情に出ているような、もの言いたげな瞳の女性を描いた作品が多いように思いました。

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 上の作品は鏑木清方の「妖魚」です。
 大阪歴史博物館で昨年開催されていた「あやしい絵」展(その時の記事はこちら)にも出品されていた絵で、他の展覧会でも観たことがあります。
 挑発的な目でこちらを見てくる人魚は蠱惑的です。

 右がコレクションを始めるきっかけになった、同じく清方の「簿雪(うすゆき)」ですが、こちらも女性の表情に哀切が漂っています。

 下の作品は、看板にもなっている北野恒富の「道行」です。
 近松門左衛門作の「心中天網島」を題材に描かれたとされている絵で、原作では男の治兵衛の方が心中に積極的で女の小春の方がついていくという感じですが、この絵では小春の方がもう心中後の世界を夢見ているように思えます。
 小春は裸足ですが、治兵衛は草履を履いていますしね。
 こういった小春の決心のような表情に福富太郎は惹かれたのではないかと思いました。
 ちなみに、この作品も「あやしい絵」展に出展されていましたよ。

 私は福富太郎はこういった美人画ばかりを蒐集していたのだと思っていたのですが、昨年、京都国立近代美術館で開催されていた明治の洋画の展覧会(その時の記事はこちら)に展示されていたような作品もあり、こういった絵にも感心があったのかと思いました。
 近美の展覧会の展示品は福富コレクションではないのですが、五姓田義松や五姓田芳柳、高橋由一、チャールズ・ワーグマン、ジョルジュ・ビゴーなどラインナップが似ていました。
 これらの絵画には、日本の初期の洋画家の努力と研鑽が感じられます。
 まだ洗練はされてませんが、そこがまた魅力なのかも。

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 この他にも岸田劉生、佐伯祐三、小磯良平などの有名な洋画家の作品もあり、美人画に限らず幅広いなと思っていたら、岡田三郎助の「ダイヤモンドの女」(写真右)が目に入り、やっぱり美人好みは健在だなとニヤリとしました。
 そしたら、現在はポーラ美術館所蔵で切手にもなっている岡田三郎助の「あやめの衣」も、以前は福富太郎が所蔵していたとキャプションに書いてあり、福富太郎の審美眼はさすがだなと感心しました。

 風景画でない荒々しいタッチの向井潤吉の「街上の労働者」や、伊東深水のキャバレーの幕間を描いたような巻物風の「戸外は春雨」も珍しかったです。

 美人画もそうでない作品も、ただ単にきれいというだけでなく、何かを主張しているような作品が多いように思いました。
 福富太郎の眼に共感した展覧会でした。
 良かったです。

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 あべのハルカスの16階の空中庭園のイルミネーションがきれいでした。
 この日は、みぞれが降るほど寒かったのであまり外にいられず、おざなりに写したのがわかるような写真ですね^^;

あべのハルカス美術館
 住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階 TEL:06-4399-9050
 開館時間:火~金10時~20時、月・土・日・祝10時~18時(入館は各閉館の30分前まで)
 休館日:年末年始、展示替え期間

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