京都 堂本印象美術館「小野竹喬・春男」展

堂本印象美術館に行ってきました。
美術館の前にあるイチョウの木がきれいな黄色に染まってきました。

こちらの美術館では「小野竹喬・春男-父と息子の切ない物語」展('20.10.6~11.23まで。観覧料510円)が開催されています。
この展覧会は、事情を知って観るとタイトル通り、切なさを感じる展覧会でした。

小野竹喬は竹内栖鳳に師事し、土田麦僊、榊原紫峰。野長瀬挽花、村上華岳とともに新しい日本画を自由に発表出来る独自の場を求めて、大正7年に「国画創作協会」を結成。
国画創作協会が解散後も京都市立美術大学で教鞭をとりながら画業を続け、文化勲章を受章した画家です。
私は今まで竹喬の息子さんのことは知らなかったのですが、息子の春夫さんも画家志望だったのですね。
京都市立絵画専門学校を卒業して、これからというところで太平洋戦争の召集令状が来て、26歳で戦死してしまいました。

作品を観ると、植物の絵がすごく良かったです。
写実性がありながらも、色の配置が落ち着いておりきれいでした。
チラシに載っている右上の「茄子」は、戦没画学生慰霊美術館の無言館に預けられていたそうです(現在は笠岡市立竹喬美術館所蔵)。
この絵も日本画らしい美しさがありました。
左下の女性を描いた未完成の絵は、後援者の長男が結婚すると聞き、春男が祝意の気持ちで描いたが召集令状が届き出征しないといけないので、代わりに送って欲しいと頼まれたというようなことが、竹喬の自筆で絵の横に書いてありました。
絵のモデルは春男の婚約者だと言われており、お父さんとしては複雑な心境であっただろうなと思います。

竹喬の絵は、木が中央にありその木の合間から背後に空や雲が見える風景が多いように思えました。
その色が朝焼けであったり、夕焼けであったりして、すごく美しいです。
竹喬は春男の戦死の報を受け取った時「その魂が空にあるような気がした」と語ったそうです。
それを知ったからか、今回の展覧会ではパステル調のきれいな色の中に、何か哀愁のようなものを感じ、切なくなりました。
チラシ右下の「月」という作品は、春男の訃報を聞いてすぐに描かれた絵だそうです。
月というタイトルですが、月より雲の方が目立ちます。
月は雲の中から出たところなのか、これから隠れるところなのかはわかりませんが、私は様々な思いを秘めて強く生きようという決意を月に込めたのではないかと思いました。
それほど強くはありませんが、満月の月が光を放ってましたから

竹喬は「2人分の仕事をする」と誓ったそうで、89歳まで生きられましたが、最晩年に至って墨彩画への挑戦を試みたそうです。
強い精神力の持ち主だったのだなと思いました。
小野竹喬の作品を久しぶりにまとめて観ることができました。
きれいな色の作品の数々に、そっと背中を押されるように気持ちが優しく引き上げられます

息子さんとの2人展は、竹喬が最も望んでいた展覧会だっただろうなと思います。
今までより少し竹喬の心情に触れたような気になった展覧会でした。
良かったです。
オススメですよ



この美術館の庭園では「野外工芸美術作家展」('20.10.6~11.23まで。入場無料)の展示がありました。

きれいな木漏れ日の中での鑑賞は良かったので、展覧会を観た後、寄られることもお忘れなく

堂本印象美術館
住所:京都市北区平野上柳町26-3 TEL:075-463-0007
開館時間:9時30分~17時(入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜(祝日の場合は開館し翌平日に休館)、展示替え期間、年末年始(12/28~1/4)

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