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京都嵐山 福田美術館「若冲誕生」展

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 嵯峨嵐山文華館と福田美術館はすぐ近くですので、単館ずつより少し安くなる二館共通券(2000円)を購入して福田美術館に行きました。
 
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 こちらでは「若冲誕生 葛藤の向こうがわ」展('20.5.23~7.26まで。入館料1300円)が開催されています。
 若冲の初期から晩年までの作品と、同時代の画家の作品の計89点を前後期に分けての展示です。

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 この作品は、2019年5月に購入されたばかりの「蕪に双鶏図」です(チラシの左図はこの作品の雄鶏の一部分)。
 それまでは関西在住の個人が、若冲作だとの確信をもっていない状態での所有だったので、今回は若冲作品の新発見として初公開です。
 またまた写真がイマイチなのですが、実物はものすごく細かいところまできっちり描かれており、すごかったです。
 とくに雄鶏の首の辺りの羽の色がきれい!
 それに比べて、蕪の葉は褪せているというのもあるかもしれませんが、色がかなり抑え気味です。
 ほとんどの葉が虫食いや病葉で、色は薄いですが描写が細かい。
 この蕪は、雄鶏の生命力を強調するために対比させたのかなと思いました。
 雌鶏はどちらかといえば蕪よりで、あまり目立たなかったのが気になったのですけどね。
 若冲の30代の時の作品だそうです。

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 他の展覧会でもよく見る「松に鸚鵡図」もありました。
 近くで見ると、白い羽も細かく描いてす。
 少し立体的に見えます。

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 他にも着色の作品はありましたが、全体的には墨絵が多かったです。
 
 今回の展示の中では、若冲と同時代の画家の作品が展示されていましたが、その中で「寒山・拾得」に注目してみました。

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 こちらは池大雅(1723-1776)の「寒山拾得図」です。
 円いですね~。
 寒山・拾得(かんざん・じっとく)って、中国の唐の時代の僧侶なのですが、風狂な人たちだったみたいでデロリ系で描かれていることが多いのですが、寒山は文殊菩薩さま、拾得は普賢菩薩さまの再来と呼ばれることもあり、画家の表現もいろいろです。

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 長沢芦雪(1754-1799)の「拾得図」は、少しデロリ系?

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 曽我蕭白(1730-1781)の「寒山拾得図」は、何ともいえぬ手慣れた感じで描かれていました。
 寒山拾得は詩僧でもあったとのことで、それがよく表されていると思います。

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 伊藤若冲(1716-1800)の「寒山拾得図」はかわいい!
 まるで童のようですね。

 円山応挙(1733-1795)の作品の展示もありましたが、寒山拾得図はなかったです。

 以前、冷泉家の現当主・為人さんの講義を聴く機会があったのですが、安永・天明期(1772-1789)の京都画壇は、これほどまでにと思うほど綺羅星の如く有名な画家が出揃っていたというようなことを話されていました。
 確かに、若冲、応挙、芦雪、蕭白、大雅、それに今回の展示にはなかったですが、与謝蕪村(1716-1784)、呉春(1752-1811)など、全部この時代に重なっていますものね。
 それも奇想の画家と呼ばれる人が多い。
 この頃、主に京都に多様性を認める文化的風土があったからだとも話されていました。

 ちなみに、安永・天明期の歴史的位置づけとしては、安永の頃はまだ落ち着いていましたが、天明期は飢饉や打ち壊しがあり、松平定信が寛政の改革を行う時代です。
 京都も、御所や京都市街の8割以上が燃える天明の大火(1788年)が起こっています。
 この大火で、若冲の自宅も焼失。
 応挙は、画室にしていた大雲院が燃え、9割方描き上げていた大乗寺の「松に孔雀図」が燃えたそうです。
 応挙は怖かったでしょうね。
 ですが、若冲も応挙も命が無事で良かったです。

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 余談が長くなってしまいましたが、パノラマギャラリーでは串野真也さんというデザイナーの作品展示がありました。
 若冲の絵画や鳥からインスピレーションを得て制作された靴の作品です。
 実際に履ける実用品みたいですが、ちょっと鳥すぎて怖い。
 人のイマジネーションって、すごいものだなと思いました。

 若冲の初公開の作品は一見の価値ありですし、様々な墨絵からは若冲の線の巧みさを堪能できました。
 若冲だけでなく、弟子や同時代の画家の作品まで観れる展覧会でした。
 良かったです。
 
福田美術館
 住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16 TEL:075-863-0606
 開館時間:10時~17時(入館は閉館30分前まで)休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始

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