兵庫県立美術館「ゴッホ展」

兵庫県立美術館で開催の「ゴッホ展」、やっと再開されたと思ったら20日からまた臨時休館になり、結局そのまま閉幕となってしまいました。
この展覧会、再開を心待ちにしていた人も多かったと思いますし、美術館側も展覧会開催費用がかなり高額だったと思われますので、会期短縮は皆にとって痛手だったと思います。
私はゴッホ展を2月に観に行き、記事を書くのにもたついているうちに休館になったため、再開したら書こうと思っていたのに会期終了になってしまったので、遅くなってしまいましたが感想を残しておきたいと思います。

ゴッホ展(本来は'20.1.25~3/29までだが3/20で閉幕。観覧料1700円)は、前半はゴッホの画業の初期に影響を与えたハーグ派、後半はパリに出てから影響を受けた印象派に焦点を当て、ゴッホの画業を紹介していました。
ゴッホは27歳から画家を志し、約10年間で画業を終えます。
ゴッホは、初めは独学で絵を描きますが、従姉妹の夫がハーグ派のリーダー格であったアントン・マウフェであったため、ハーグ派の画家からいろいろ教わったようです。

ゴッホの初期のスケッチが何枚か展示されていましたが、はじめは人物画であるにもかかわらず、まるで物を描いているかのような硬さが見られます。
それを他の画家から指摘されたみたいで、ゴッホは反発して、周りから嫌われながらも少しずつ、少しずつ改善しようと努力していることがスケッチから見て取れました。
それでも、「ジャガイモを食べる人々」などは、どの人物も同じ表情で人形みたいですけどね。
ハーグ派の画家というのは、あまりなじみがなかったのですが、今回の展覧会で観れたのは良かったです。
ヤン・ヘンドリック・ワイセンブルフの作品は、光がきれいな絵で、少し距離をとって観ると良かったです。
アントン・マウフェは、ピントを合わせるのが上手な画家だなと思いました。
マウフェの「収穫」という作品は、印象派の絵のようにきれいでしたよ。
ゴッホが、色調と色彩の重要さをマウフェから学んだと言ってたことに納得しました。
後半の展示は、ゴッホが突然パリに住んでいるテオのところに押しかけ、印象派の画家と交流をもったところから始まります。
印象派の画家の作品が並びますが、このコーナーはピサロの作品が色がきれいで良かったです。
ゴッホはモンティセリの作品を色彩の手本として真似たそうで、モンティセリの「陶器壺の花」とゴッホの「花瓶の花」は同じモチーフで描かれているのですが、この2枚は向い合せに展示されており、比較できるようになっています。
ゴッホの方はのっぺりしており、モンティセリの方が立体的でした。
でも、モンティセリの方は形がぼんやりしてましたけどね。
モネやルノワールの光や色を優先した絵は、定番の美しさです。
今回のゴーギャンの「水飼い場」は補色を使っていますが、印象派風の描き方でした。

印象派の画家に触発されて描いたゴッホの絵は、「麦畑とポピー」や「麦畑」など明るいきれいな絵が揃っており、こちらの気分まで明るくなりました。

ですが、次のコーナーで「糸杉」を見て、ギョッとしました。
前のコーナーの素直な表現から、いきなり木も空も地面の草も全てがうねっています。
空は蛍光色のような明るく美しい水色で、真昼間のように見えるのに細い月が輝いており、地面には花が咲き乱れています。
すごいハイテンションで、このテンションでは体の方がついていけないだろうなと思いました。
この作品は、サン=レミの療養所に入院中に描かれたものだそうです。

「糸杉」と向い合せで展示されていたのが「薔薇」です。
うねりは軽減されていますが、まだ波線が強く、作品からの印象では完全回復とはいえない状態のように思います。
ですが、ゴッホはこの後すぐに退院し、その2か月後に亡くなります。
私は今まであまりゴッホの絵から病気の影響を感じたことはありませんでしたし、今回の「糸杉」も「薔薇」もこれらの作品だけを見ればゴッホ特有の表現で、美しささえ感じたと思います。
ですが、今回は穏やかで素直な作品の後に、テンションの高い作品をもってくるという展示のしかたで、見方を誘導されたようで、ちょっと演出にあざとさを感じました。
別に入院していたことを強調しなくても、ゴッホならどんな時でも、どんな場所でものめりこんで熱中して絵を描いていたと思いますけどね。
図録は2300円でした。
今回の展覧会では、書簡に残っているゴッホの言葉も紹介されていましたが、絵を描く楽しさによるワクワク感が伝わってきます。
ゴッホは絵を描くことが大好きだったのでしょうね

兵庫県立美術館
住所:神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 TEL:078-262-0901
開館時間:10時~18時(金・土は20時まで。入館は閉館30分前まで)休館日:月曜、展示替え期間、年末年始

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