大阪 あべのハルカス美術館「カラヴァッジョ展」

あべのハルカス美術館で開催されている「カラヴァッジョ展」('19.12.26~'20.2.16まで。観覧料1600円)を観てきました。
いや~、カラヴァッジョの絵って面白いですね。
私はもともと中世の宗教絵画って苦手だったのです。
ぬめっとした湿り気のある暗闇に、キリストに関連する残酷な仕打ちを受ける人物が浮かびあがり、悲しみの強制や不信心者への圧力のようなものをかけてくるような気がして、「暗くて重いねん!」といつも思ってました

カラヴァッジョに対しても、リアル描写といわれていますが、「これのどこが美少年!?」とか思ってました。
実はこの展覧会、私は2回観に行きまして、1回目は土日の昼にすごい人混みの中で観たらいつもの感想しか出てこなかったのですが、2回目は夜に観たら会場も少し照明をおとしているのか、カラヴァッジョの絵がほんのりとした暗さにマッチし、昼間の喧噪の中とは違ってしっとりと落ち着いて見え、陰影の効果がはっきり出てきて人物が表情をもって見えだしたのです

中世は現代のように明るい光の下ではなく、ロウソクの灯りぐらいの明るさの中で描かれていますし、カラヴァッジョは自分の絵が最大限に効果的に見えるように飾られる場所も考慮していたと思われ、薄暗さの中で輝く、これがカラヴァッジョのリアルかと納得しました。

前置きが長くなってしまいましたが、会場はカラヴァッジョやその周辺の画家の作品を展示しています。
普通のキャプションに加え、画家たち自らが自分達の作品を解説するという形式の解説板もあり、カラヴァッジョにはヤマザキマリさんのイラストがついていました。
天才にしてならず者、どんぐり眼の小太り男だったみたいですが、ヤマザキさんのカラヴァッジョはかっこいいイタリア男です

カラヴァッジョって、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じように、村の名前だったのですね。
本名はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョです。
聖ミカエル祭の前後あたりで生まれたのでミケランジェロと名付けられたそうですよ。

カラヴァッジョの作品は当時から人気があったので、本人の真筆・オリジナル、画家本人がオリジナルと同じ物を描いたレプリカ、生前から没後に他の画家が模写したコピーの3種類あるそうです。
展覧会では本人の帰属作品には、横に柱が立てられていました。

今回大阪会場では、帰属作品を含めカラヴァッジョの作品は10点展示されています。
ギュスターブ・モローのユディトとの比較をしようと思って楽しみにしていた「ホロフェルネスの首を斬るユディト」が来なかったのは残念でした。
カラヴァッジョはまじめにコツコツ写生することなどを嫌い、いきなり描き出したりする画家だったようで、習作がないそうなのですが、「悲嘆に暮れるマグダラのマリア」は、教会の祭壇画の片隅に描かれているマグダラのマリアの習作だそうで珍しいそうです。
顔は下に向けて嘆いているので見えませんが、体つきは普通の女性のようです。
マグダラのマリアを連想させるのは髪だけです。
カラヴァッジョは必ずモデルを使って描いていたようなので、市井の女性にモデルを頼んで描いたのかなと思いました。

「リュート弾き」は昼間見た時はあまりよく思わなかったのですが、夜に見るとかわいい少年だなと印象を変えました。
花瓶の中の花の枝と、花瓶に映った部屋の景色との両方を小さな花瓶に描いているのがすごいと思いました。
会場では、この絵を立体再現し、リュートと絵に描かれている楽譜の曲を聞けるようになっていました。
しっとりとした曲でしたよ。
面白い試みですね。
そうそう、絵の展示方法も面白くて、カラヴァッジョの作品を真ん中にして、両脇の壁に一方はカラヴァッジョの友人・仲間の作品、もう片方にはカラヴァッジョと敵対していた画家の作品を並べて、友人とライバルの作品が向い合せで腕比べをしているみたいな部屋がありました。
ちなみにその部屋は私はライバルの方に軍配。
だって見やすいんですもの

最初の図像の看板になっている「法悦のマグダラのマリア」は、あまり女性っぽくないです。
胸もありませんし、お肌もあれてますし。
でも、一筋の涙が劇的ですよね。
左上に荊十字架があるそうですが、右横から見てどうにか十字架は見えましたが荊の部分はわかりませんでした。
カラヴァッジョがボルゲーゼ枢機卿にとりなしを頼むため最後まで持っていたのはヨハネ2枚とマグダラのマリア1枚の計3枚だったそうです。
その中の1枚が今回展示されている「洗礼者聖ヨハネ」で、普通十字架と子羊が描かれるそうですが、なぜか棒と雄羊になっています。
カラヴァッジョは死後も人気があったので模写する人も多く、これ以後、十字架ではなく棒を持つヨハネ像も多く描かれたそうです。
カラヴァッジョのヨハネ像は心細げで少し憐み乞うような青年の姿でした


会場の外には「歯を抜く人」と一緒に写真が撮れるパネルがありました。
無理やり歯を抜かれそうになって、「ギャーっ」と叫んでいる人を見る一員に加わる気にはちょっとなりませんね

会場はキャプションの他に、カラヴァッジョの移動地や人間関係などコラムやカラヴァッジョに関する情報がいっぱい。
立体カラヴァッジョ解説書みたいな展覧会で面白かったです。
図録は2750円とかなり高価ですが、展覧会で展示されていた情報や他会場の作品も載っているみたいですよ。

イタリア政府が直前になって出品取りやめにするぐらいなので、カラヴァッジョ展が観れる機会はそう多くないかもしれません。
観に行って良かったです

あべのハルカス美術館
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階 TEL:06-4399-9050
開館時間:火~金10時~20時、月・土・日・祝10時~18時(入館は閉館の各30分前まで) 休館日:2019年12/31、2020年1/1、1/14、

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