大阪 あべのハルカス美術館「ラファエル前派の軌跡展」

あべのハルカス美術館で開催されている「ラファエル前派の軌跡展」('19.10.5~12.15まで。観覧料1500円)を観てきました。
一部写真撮影可だったので、載せさせていただきます。
今回の展覧会を観て、ラファエル前派は美術評論家のジョン・ラスキンを中心に展開していたんだなと思いました。
ラスキンの支持によりラファエル前派グループは発展しましたし、初期メンバーの1人のジョン・エヴァレット・ミレイの脱退後には事実上解散になりましたが、ラスキンの著書を読んで感動したバーン=ジョーンズなどがロセッティと交流を持ち第2世代につながっていきます。
ですが、この辺りの人間関係は複雑です。

これは今回の展覧会の展示リストの裏面に載っていたものです。
ラスキンの元妻のエフィーは、ミレイと再婚しています。
また、ウィリアム・モリスの妻ジェインは結婚後もロセッティと付き合っていたといわれています。
この時代のモラルはどうなっていたのだろうと疑問を持っていたのですが、スザンヌ・フェイジェンス・クーパー著の「エフィー・グレイ -ラスキン、ミレイと生きた情熱の日々-」というエフィーについての評伝によると、ラスキンの性質や性格に問題があり、エフィーの方から離婚訴訟をおこし勝ち取ったようです。
離婚の原因に、ミレイとの不倫があったのではないかと噂されていたようですが、実際にはそのようなことはありませんでした。
ですがプラトニックな感情はあったようで、ミレイの好意を心の糧にして、女性からの離婚なんて認められない時代にラスキンに非があっての離婚ということを世間にしらしめました。
ミレイとは翌年に結婚しているのですが、決して不倫ではないという身の潔白を示してから結婚しているのですからきちんとしたモラルを持っていた女性だったということがわかりました。
それでもかなり世間からたたかれたみたいですが、強い女性です。

この絵は、ラスキン夫妻とミレイが一緒に旅行した折、ミレイがエフィーを描いた「滝」という絵です。
展覧会ではラスキンの絵もたくさん展示されており、ミレイの描いたこの川の風景をラスキンも描いていたのですが、ラスキンの描いたものは「絵」というよりは「記録」のための写生みたいで味気ないです。
それもやけに細かい。
ラスキンの絵から受ける印象は本に書かれていたラスキン像と一致し、私もラスキンは苦手だと思いました(苦笑)。


他の本で、ロセッティとモリスの妻ジェインについて読んだのですが、ジェインは元々ロセッティが見つけたモデルで、ロセッティとジェインは恋愛関係になりそうだったのですが、その時ロセッティはエリザベス・シダルと結婚しており、ロセッティはジェインから逃げたそうです。
その時にモリスがジェインに結婚を申し込み、ジェインがそれを受けました。
ジェインは本当はロセッティのことが好きだったみたいなのですが、モリスはお金持ちなので、もしロセッティと付き合っていたとしても結果は変わらなかっただろうと語っていたとのことです。
愛よりお金とは、現代人なみにドライな考え方だと思いますが、この時代にそこまで割り切って行動できるとは、ジェインもやっぱり意志の強い女性ですね。

結婚後もジェインはロセッティのモデルを続け、恋愛関係になったようです。
それでもモリスは何も言わなかったようで、ジェインは強い。
19世紀はまさしく自立できる女性が台頭してきた時代だったのでしょうね。
ファム・ファタルという言葉は、女性とは男性の後についてくるだけの自主性のない存在と思っていた男性たちが、自分で考え、男性が考え付かない行動までしてしまう女性の強さに対する驚きや畏怖感からでたのかもしれませんね。

バーン=ジョーンズやレイトン、アーサー・ヒューズなど好きな画家の絵がたくさんあり、目をハートにして観てまわりました

それと同時に、人間関係にも興味が湧いた展覧会でした。
あべのハルカス美術館
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階 TEL:06-4399-9050
開館時間:火~金10時~20時、月・土・日・祝10時~18時(入館は閉館の各30分前まで) 休館日:一部の月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替期間中

にほんブログ村
スポンサーサイト