奈良県立美術館 「吉川観方」展

奈良国立博物館での正倉院展を観た後、奈良県立美術館で開催されている「開館300回記念特別展 生誕125年・没後40年 吉川観方―日本文化へのまなざし」展('19.9.28~11.17まで。観覧料800円)を観てきました。
この展覧会、良かった~


吉川観方(よしかわかんぽう)は、大正から昭和にかけて活躍した日本画家・版画家です。
若い頃から風俗史研究にも携わり、映画の時代考証なども行っていたこともあってか、絵画をはじめ染織や工芸品など多岐にわたるコレクターとしても有名です。
今回の展覧会では、観方が描いた作品、観方に縁があった日本画家の作品、観方のコレクションなどが展示されていました。

第1章は観方の作品の紹介ですが、会場に入ってまず最初の展示は「加茂川舞妓夕涼図」という作品です。
竹久夢二風のかわいい舞妓さんの絵ですが、青い縞の着物の描写に惹きつけられました

「入相告る頃」という作品は展覧会の看板やチラシの表紙になっている作品ですが、それと並んで展示されていたのが「櫻下遊詠の図」です。
この2曲の屏風は描かれている人物が酷似しており、2作品並べてあると、後ろにいた男性2人が前にいた女性3人を追い抜いていき、女性の持っている桜の枝からこぼれ散った花びらに気を取られている男性だけはそのまま女性の後ろという感じで、楽しい春の散策の時間経過までわかるようです

実際は、人物は同じようですが、着物は皆違っているので別の屏風なんですけどね

「秋思」は髪の描き方が細やかで丁寧ですが、表装も美しかったです

「七夕の宵」や「踊笠美人図」など観方の描く美人画は品がありどれも美しいです

その一方、幽霊画も描いており、こちらは番町皿屋敷のお菊を題材にした「夕風」は美人の幽霊画でしたが、怖い幽霊画もありました。
観方の幽霊画に合わせてか、長澤芦雪や他の画家の幽霊図も展示されており、これらは真夏に見たかったです(笑)。
「観方創作版画」は豪華版で、絵も色も彫りもめちゃめちゃきれいでした

第2章は観方と日本画ということで、他の画家の作品が展示してあります。
大正時代のデロリ系の画家、岡本神草や甲斐庄楠音は衣装に凝っていて、作風は違いますが風俗史研究をしていた観方とはマニアっぽい感覚で波長が合っていたのではないかという気がします。
デロリではない男性の画家の作品も、中村貞以の「朝」は色が爽やかできれいでしたし、児玉希望の「忠貞双絶」は鼓が画面を引き締めていて良かったなぁ。
上村松園や伊藤小坡、梶原緋佐子、三谷十糸子など女性画家との交流も多かったのか、今回の展覧会では良い作品が揃っており、ウキウキした気分で観てまわりました


第3章は観方のコレクションの展示ですが、仏教系の図や歴史画、浮世絵、着物、鬘、工芸品など収集品が多岐に渡っています。
博物館並みに集めているなぁと思いながら見ていたのですが、その中で「緋地輪無唐草文様 袍」という衣装の緋色の色がものすごく美しく、目を奪われました


第4章は観方の関連資料の紹介でおしまいです。

観方の画業だけでなく、コレクションや周辺画家の作品まで展示されており、見応えのある展覧会でした

これだけ充実した展示作品が並んでいるのに、あまり混んでなくゆっくり観れます。
京都の美術館だと1200円ぐらい払って人混みの中で疲れながら見ることになりそうな内容なのに、800円でゆっくり観れてとても満足しました


図録も1700円と良心的な価格でしたよ。
奈良国立博物館に行かれた折には、奈良県立美術館にも行かれることをオススメします。
奈良県立美術館
住所:奈良市登大路町10-6 TEL:0742-23-3968
開館時間:9時~17時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始(12/28~1/4)、展示替え期間

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