兵庫 神戸ゆかりの美術館&ファッション美術館「千住博展」

神戸ゆかりの美術館と神戸ファッション美術館の2館合同で開催されている「高野山金剛峯寺 襖絵完成記念 千住博展」('19.9.14~11.4まで。2館分入館料1300円)を観てきました。
千住さんの瀧図は以前にも観たことがあり、その時にダイナミックスさと清々しさを感じたので今回も楽しみにしていきました。
横25mの瀧図は圧巻ですね。

今回、「瀧図」と「断崖図」の制作過程を撮ったビデオが流れていたのですが、100年保つように絵具は天然顔料にこだわり、下地の色塗りもものすごく丁寧にされていました。
私は絵を全く描きませんので日本画の顔料の溶き方など全然知らないのですが、胡粉の溶き方も何度も何度も漉して、通常よりかなり滑らかにされているのではないかと思いました。
正直、シンプルな絵にこれほど時間かけているとは思っていませんでした。
いえ、シンプルだからこそ基礎をしっかり押さえて丁寧に下準備をする必要があるのだということが伝わってきました。

「断崖図」の方は、岩肌、山肌の部分はしっかりとした和紙を揉んでしわを作り、そのしわに色を刷いて、その和紙を元となる絵に貼り付けて作成されたそうです。
それはそれは自然な感じの写実的な見事な岩肌・山肌で、和紙を貼り付けた継ぎ目もわかりませんし、元となる絵との一体感も素晴らしく、雄大な山を描いた障壁画になっていました。
この「断崖図」を見て、私はちょっと目からうろこが落ちる気がしました。
通常、オーソドックスな日本画はこういう山肌も全部筆で細かく描いて表現し、観ている方は無から自然を画面上に作り上げる画家の巧さに感心します。
でも、画家であってもちみちみとした描き方ができない、もしくはそういうスタイルをとらない人も大勢います。
山の描き方なんて千差万別ですし、緻密に描くことだけが素晴らしいという訳でもありませんからね。
ですが、普段そういう描き方をしていない人が、そんな絵を描きたいと思った時にどうするのか?
無理してちみちみ描くのか?
この作品は、自分ができないなら(千住さんができないということではありませんよ。例え話です)他の物を使って表現しても良いのだ、できあがったものが従来の障壁画と遜色なければいいだけの話なのだからと言っているようで、私の障壁画とは筆で全部描くものだという固定概念を良い意味で吹き飛ばしてくれました。
筆の代わりに物を使って表現するといっても、和紙で山肌を表現するという発想自体すごいことですし、作る前からある程度の完成図をイメージしていなければ到底完成には至らない難しい方法だと思います。
制作動画を見ても、和紙のしわの入れ方の段階からイメージして揉んでいましたからね。
試行錯誤が必要な感じがしますが、制作に入る前のイメージの明確化や試行錯誤がすごくて、制作に入ってからは迷わず淡々と出来上がったような気がします。
それでも下地の絵と和紙を調和させるための加筆はすごく丁寧で、できあがった「断崖図」は素晴らしかったです。

第2会場の神戸ファッション美術館では、初期の作品やブラックライトの光によって色が変わる「龍神Ⅰ・Ⅱ」などが展示されていました。
展示数自体は27点と少ないですが、大胆に描いているようで基本をしっかりと押さえ、丁寧な下準備と豊かな発想力、明確なイメージ力を持って作品を創っていることが伝わる展覧会でした。
良かったです。
神戸ゆかりの美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中2-9-1 TEL:078-858-1520
開館時間:10時~18時(入館17時半まで)、休館日:水曜、年末年始(12月29日~1月3日)
神戸ファッション美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中2-9-1 TEL:078-858-0050
開館時間:10時~18時(入館17時半まで)、休館日:水曜、年末年始(12月29日~1月3日)

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