兵庫 姫路と神戸の展覧会
前回の「不染鉄」展に引き続き、今日(11/5)で会期終了の展覧会の紹介をしますが、もう間に合いませんので自分の記録用に

姫路市立美術館で開催されているのは「リアル(写実)のゆくえ」」展('17.9.23~11.5まで。観覧料1000円)です。
「高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」というサブタイトルにもあるように、美術界の写実は高橋由一が洋画の写実表現を導入し、その後、大正期の岸田劉生に引き継がれ、現在写真のような細密描写に移行しています。
由一の写実表現が移入されてから150年とのことで、写実の流れを諦観する展覧会です。

最初に由一の「鮭」と礒江毅の「鮭-高橋由一へのオマージュ-」が並べて展示されています(チラシ左)。
頭の中で由一の鮭ってすごくリアルとの記憶があったのですが、礒江の鮭と並べて観ると礒江の方がリアルで、由一のはそれほどではありませんでした。
ですが、存在感は由一の方があると私は思います。
前に礒江の展覧会を観た時にも思ったのですが(その時の記事はこちら)、礒江の作品はリアルすぎて無機物になり、個の質量も風化され軽くなっているような印象です。
俗っぽく言えば、由一の方は干物の旨味が出て美味しそうですが、礒江の方は脂も落ちてカスカスで食べるところが少なそうと思うのは私だけでしょうか(笑)。
作品は時代別に展示されており、あまり難しく考えず一つずつ作品を楽しんできたのですが、由一や劉生の写実と礒江のようなスーパーリアルの現代の写実とはやっぱり違うと思いました。
由一や劉生の系統の写実は、描かれない部分は見る方の感性で補完されるところがあり余裕があるのですが、現代の緻密に近い写実は、他者の補完を許さず終わりのない完璧さを一人で追求しているようで、まるで苦行を見せられているように感じ、私はちょっとしんどいです。
美しいもの、記憶にとどめたいものをできるだけリアルに描いて残したいという気持ちはわかるのですが、写真ではなく人間の手で描かれていると、無限の物体や風景が小さなキャンバスの中に押し込まれているようで閉塞感を感じてしまうのです。
ただ、写真ならそれほど閉塞感を感じないということは、写真はその「時」を写し取っているという固定観念があるからかもしれず、それなら絵から受ける違和感も見る方の問題なのかなとも思います。
いろいろ書きましたが、現代の画家のスーパーリアルさは技術的にはすごいと思いますし、なんやかやといっても写実には興味があります。
由一から現代までの写実表現を堪能できる展覧会で楽しめました

次に紹介するのは、神戸ゆかりの美術館で開催されている「萩尾望都 SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく」展('17.9.9~11,5まで。入館料900円)です。
ご存知、大御所漫画家・萩尾望都氏の原画展です。
萩尾望都といえば「ポーの一族」が有名ですが、今回はSF作品の原画展ということで、ポーの一族の作品はありません。
でも私は当時ポーの一族にはあまり興味がわかず、萩尾作品で最初に面白いと思ったのが「11人いる!」だったので、その原画が見れて良かったです

でも一番好きなのは、「百億の昼と千億の夜」です。
私は昔から神話やミステリックな話が大好きで、阿修羅王やシッタータ、弥勒、プラトンなど東西の宗教や偉人がわんさかでて、舞台がアトランティスや宇宙で、私の好きな要素がてんこもりなので好きにならないわけがない(笑)。
原作は光瀬龍の小説で、この設定でよくまとめあげたなと感心します。
小説の方は学生の頃友達に貸したまま未だに返ってきません(笑)。
ということで、今回は大好きだった作品の原画が見れて感激です
1970年代は少女マンガでSFというのはまだ普及していませんでしたが、外国のSF小説を読んでSF好きになった読者は男女ともに確実に増えていた時代なので、ニーズはあったと思います。
ですが今回の展覧会を見て、萩尾作品がすごいなと思ったのは、作品の設定がしっかりしていることです。
想像であってもあやふやな知識でちゃっちく描かれたのでは満足しない人も少なくなかったでしょう。
逆に、設定がしっかりしているため、多少難しくても読者を惹きつける力強さが作品にはあるように思いました。
なんかあらためて萩尾漫画を読んでみたくなった展覧会でした

最後に紹介する展覧会は、神戸市立小磯記念美術館で開催されている「ユニマットコレクション フランス近代絵画と珠玉のラリック展-やすらぎの美を求めて-」展('17.9.16~11.12まで。入館料800円)です。
この展覧会はユニマットグループの創業者・高橋洋二氏が収集したコレクションを紹介した展覧会です。
サブタイトルどおり、穏やかで優しげな絵が多かったです。
見ていてやすらぎました
ルノワールやドガ、コローやミレーなど有名どころの作品が揃っているのですが、あまり知らない画家の作品もあり、それが結構良かったです。
アルベール・ガブリエル・リゴロの「ソローニュの霧氷」やエミール・シャルル・ランピネの「川の風景」などきれいでした。
カミーユ・ボンボワの「醸造所の見える風景」は、森の奥に小さく館が見え、まるでおとぎ話の中に出てくるような風景です。
キース・ヴァン・ドンゲンの女性って好みなのですが、今回の「婦人の肖像」も美人でした。
それに藤田嗣治の「バラ」は、初めて観ましたが茎が曲がっていて美しいというものではありませんが、印象に残ります。
ルネ・ラリックの作品も20数点出展されており、その中で私は「蝶」という花瓶が、上品ですが形が面白く気に入りました。
自分の好きな美術品に囲まれて過ごす時間は至福の時だろうなと思える展覧会でした。
今まで公開されていなかったコレクションだそうで、見せてくださってありがとうと言いたいです。
この展覧会は11/12まで開催されていますので、今ならまだ間に合いますよ
姫路市立美術館
住所:姫路市本町68-25 TEL:079-222-2288
開館時間:10時~17時(入場は16時半まで) 休館日:月曜(祝日を除く)、祝日の翌日、年末
年始(12月25日~1月5日)、展示替えなどで臨時休館あり
神戸ゆかりの美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中2-9-1 TEL:078-858-1520
開館時間:10時~18時(入館17時半まで)、休館日:水曜、年末年始(12月29日~1月3日)
神戸市立小磯記念美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中5-7 TEL:078-857-5880
開館時間:10時~17時(特別展開催中の金曜日は18時まで。入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜、年末年始(12月29日~1月3日)他(開館時間、休館日は臨時に変更する場合
あり)


姫路市立美術館で開催されているのは「リアル(写実)のゆくえ」」展('17.9.23~11.5まで。観覧料1000円)です。
「高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」というサブタイトルにもあるように、美術界の写実は高橋由一が洋画の写実表現を導入し、その後、大正期の岸田劉生に引き継がれ、現在写真のような細密描写に移行しています。
由一の写実表現が移入されてから150年とのことで、写実の流れを諦観する展覧会です。


最初に由一の「鮭」と礒江毅の「鮭-高橋由一へのオマージュ-」が並べて展示されています(チラシ左)。
頭の中で由一の鮭ってすごくリアルとの記憶があったのですが、礒江の鮭と並べて観ると礒江の方がリアルで、由一のはそれほどではありませんでした。
ですが、存在感は由一の方があると私は思います。
前に礒江の展覧会を観た時にも思ったのですが(その時の記事はこちら)、礒江の作品はリアルすぎて無機物になり、個の質量も風化され軽くなっているような印象です。
俗っぽく言えば、由一の方は干物の旨味が出て美味しそうですが、礒江の方は脂も落ちてカスカスで食べるところが少なそうと思うのは私だけでしょうか(笑)。
作品は時代別に展示されており、あまり難しく考えず一つずつ作品を楽しんできたのですが、由一や劉生の写実と礒江のようなスーパーリアルの現代の写実とはやっぱり違うと思いました。
由一や劉生の系統の写実は、描かれない部分は見る方の感性で補完されるところがあり余裕があるのですが、現代の緻密に近い写実は、他者の補完を許さず終わりのない完璧さを一人で追求しているようで、まるで苦行を見せられているように感じ、私はちょっとしんどいです。
美しいもの、記憶にとどめたいものをできるだけリアルに描いて残したいという気持ちはわかるのですが、写真ではなく人間の手で描かれていると、無限の物体や風景が小さなキャンバスの中に押し込まれているようで閉塞感を感じてしまうのです。
ただ、写真ならそれほど閉塞感を感じないということは、写真はその「時」を写し取っているという固定観念があるからかもしれず、それなら絵から受ける違和感も見る方の問題なのかなとも思います。
いろいろ書きましたが、現代の画家のスーパーリアルさは技術的にはすごいと思いますし、なんやかやといっても写実には興味があります。
由一から現代までの写実表現を堪能できる展覧会で楽しめました



次に紹介するのは、神戸ゆかりの美術館で開催されている「萩尾望都 SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく」展('17.9.9~11,5まで。入館料900円)です。
ご存知、大御所漫画家・萩尾望都氏の原画展です。
萩尾望都といえば「ポーの一族」が有名ですが、今回はSF作品の原画展ということで、ポーの一族の作品はありません。
でも私は当時ポーの一族にはあまり興味がわかず、萩尾作品で最初に面白いと思ったのが「11人いる!」だったので、その原画が見れて良かったです


でも一番好きなのは、「百億の昼と千億の夜」です。
私は昔から神話やミステリックな話が大好きで、阿修羅王やシッタータ、弥勒、プラトンなど東西の宗教や偉人がわんさかでて、舞台がアトランティスや宇宙で、私の好きな要素がてんこもりなので好きにならないわけがない(笑)。
原作は光瀬龍の小説で、この設定でよくまとめあげたなと感心します。
小説の方は学生の頃友達に貸したまま未だに返ってきません(笑)。
ということで、今回は大好きだった作品の原画が見れて感激です

1970年代は少女マンガでSFというのはまだ普及していませんでしたが、外国のSF小説を読んでSF好きになった読者は男女ともに確実に増えていた時代なので、ニーズはあったと思います。
ですが今回の展覧会を見て、萩尾作品がすごいなと思ったのは、作品の設定がしっかりしていることです。
想像であってもあやふやな知識でちゃっちく描かれたのでは満足しない人も少なくなかったでしょう。
逆に、設定がしっかりしているため、多少難しくても読者を惹きつける力強さが作品にはあるように思いました。
なんかあらためて萩尾漫画を読んでみたくなった展覧会でした


最後に紹介する展覧会は、神戸市立小磯記念美術館で開催されている「ユニマットコレクション フランス近代絵画と珠玉のラリック展-やすらぎの美を求めて-」展('17.9.16~11.12まで。入館料800円)です。


この展覧会はユニマットグループの創業者・高橋洋二氏が収集したコレクションを紹介した展覧会です。
サブタイトルどおり、穏やかで優しげな絵が多かったです。
見ていてやすらぎました

ルノワールやドガ、コローやミレーなど有名どころの作品が揃っているのですが、あまり知らない画家の作品もあり、それが結構良かったです。
アルベール・ガブリエル・リゴロの「ソローニュの霧氷」やエミール・シャルル・ランピネの「川の風景」などきれいでした。
カミーユ・ボンボワの「醸造所の見える風景」は、森の奥に小さく館が見え、まるでおとぎ話の中に出てくるような風景です。
キース・ヴァン・ドンゲンの女性って好みなのですが、今回の「婦人の肖像」も美人でした。
それに藤田嗣治の「バラ」は、初めて観ましたが茎が曲がっていて美しいというものではありませんが、印象に残ります。
ルネ・ラリックの作品も20数点出展されており、その中で私は「蝶」という花瓶が、上品ですが形が面白く気に入りました。
自分の好きな美術品に囲まれて過ごす時間は至福の時だろうなと思える展覧会でした。
今まで公開されていなかったコレクションだそうで、見せてくださってありがとうと言いたいです。
この展覧会は11/12まで開催されていますので、今ならまだ間に合いますよ

姫路市立美術館
住所:姫路市本町68-25 TEL:079-222-2288
開館時間:10時~17時(入場は16時半まで) 休館日:月曜(祝日を除く)、祝日の翌日、年末
年始(12月25日~1月5日)、展示替えなどで臨時休館あり
神戸ゆかりの美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中2-9-1 TEL:078-858-1520
開館時間:10時~18時(入館17時半まで)、休館日:水曜、年末年始(12月29日~1月3日)
神戸市立小磯記念美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中5-7 TEL:078-857-5880
開館時間:10時~17時(特別展開催中の金曜日は18時まで。入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜、年末年始(12月29日~1月3日)他(開館時間、休館日は臨時に変更する場合
あり)
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