姫路市立美術館 「レーピン展」

今日までの展覧会で、ギリギリになって申し訳ないのです、姫路市立美術館で開催されている「国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展」('13.2.16~3.30まで。観覧料1000円)の紹介をさせていただきます。
この展覧会、良かったですよ

イリヤ・レーピンは19世紀後半から20世紀にかけて活躍したロシアの画家です。
官立美術アカデミーの制約に抗議したロシア・リアリズム美術の画家集団が発足させた「移動派」の中心的画家です。
革命前後の激動の時代を生きた人だけあって、描く題材も社会的なものから歴史画、肖像画まで多彩です。
今回の展覧会は、レーピンの作品約80点を紹介する日本で初めての大規模な回顧展だそうです。
レーピンの名前は以前から知っていましたし、作品も数枚観たことがありますが、今回ずらりと並んだ作品の数々を観て、レーピンは凄い!と思いました

作品が雄弁というか、感情がものすごくダイレクトに伝わってくるのです。
それも抑えている感情が滲みでているというような。
よく何も描かれていない無のキャンパスから、人に訴えかける能弁な絵を造り出せるなぁと感心してしまいました。
それも観る者に嫌悪感を与えない程度に美も保っているのですから、本当にすごいです。
展覧会では、ルーピンの自画像から始まっており、自画像の印象は優しそうでしたが、絵を観ているとただ優しいだけではなく、ものすごく感受性が豊かで、裏表なく素直な性格だったのではないかと思いました。

ポスターになっている「皇女ソフィア」という絵は、異母弟であるピョートル1世に追い落とされ修道院に幽閉にされている皇女ソフィアが描かれています。
めちゃ怒っているように見えますよね。
目は血走っていますし、頭から湯気がでてるのではないかと思うぐらい怒っていますが静かです。
実は、何の証拠もなく反乱の首謀者と疑われ、見せしめのため修道院前で反乱者数名の処刑が行われ、窓の外には処刑された死体がぶらさがっているのです。
「私に権力があれば・・・」という、怒りと無念さが伝わります。

そうかと思うと、チラシの左上は息子ユーリーを、右上は妻ヴェーラを描いた絵ですが、どちらも対象に対する愛情が感じ取れました。
とくに妻を描いた「休息-妻ヴェーラ・レピーナの肖像」は、椅子の上でうたた寝している表情がとてもかわいく、レーピンは奥さんを愛おしく思ってこの絵を描いたんだろうなと思いました。
チラシ左下はムソルグスキーの肖像がですが、ムソルグスキーはこの絵が完成した10日後ぐらいに亡くなったそうです。
アルコールに溺れ身なりを整えることもしていませんが、目はまだ死んではおらず、大作曲家としてのプライドを持っているように私は感じました。
トルストイの肖像画もありましたが、こちらは苦悩と疲労感が感じられました。
中央は「トルコのスルタンに手紙を書く」、右下は「思いがけなく」という作品です。
どちらも登場人物の表情がすごいですので、行かれる方は是非チェックしてくださいね。
図録は2300円です。
この展覧会は巡回展で、もう既に東京と浜松では終わりましたが、姫路市立美術館の後、神奈川県立近代美術館葉山('13.4.6~5.26まで)で開催される予定です。
姫路での開催は今日(3/30)までですが、どれも主張のある強い絵で、絵に力があります。
私は気に入りました

おススメですよ。
姫路市立美術館
住所:姫路市本町68-25 TEL:079-222-2288
開館時間:10時~17時(入場は16時半まで) 休館日:月曜(祝日を除く)、祝日の翌日、年末年始(12月25日~1月5日)、展示替えなどで臨時休館あり