奈良 松柏美術館 「竹内栖鳳展」

奈良学園前にある松柏美術館で開催されていた「京都画壇の画家シリーズⅣ 竹内栖鳳展」('12.7.18~9.2まで。入館料800円)に会期終了日に観に行ってきました。
会期終了間近の展覧会がたくさんあるので、そちらを優先しなければならないのですが、栖鳳展を観た前日、横山大観展を観に行って、既にブログ記事をアップしましたので、「東の大観、西の栖鳳」と並び称される栖鳳を後回しにするわけにはいきません(笑)。
ということで、もう終了しているのですが紹介させていただきますね

今回の展覧会は正直言って、過去に何度も観たことがある作品がほとんどだったので、特別な感動はあまりなかったのですが、栖鳳の息子の逸氏の書かれた文章や、上村松園による師匠である栖鳳のエピソード、栖鳳が亡くなった時の様子が書かれた雑誌などの資料から栖鳳のことが知ることができたことが良かったです

竹内栖鳳は17歳の時から幸野楳嶺の門下生になっているのですが、楳嶺はかなりきっちりした厳しい師匠だったみたいです。
当時、師匠の絵をそっくり真似て描くことが通常とされていたそうですが、栖鳳は自分なりの絵を描いたのか、楳嶺に「近頃、棲鳳は変わった絵を描いている」というようなことを言われたりしてたみたいです。
その後、破門になっているので、多分、褒めて言われたことではなさそうですが、師匠の物真似だけでは飽き足らなかったのではないかと思われるエピソードですよね。
また、楳嶺のところに1日行くとおやつが出たそうですが、半日しか行かなかった栖鳳にはお饅頭が半分しかなかったことで、師匠のそのやり方に栖鳳はかなり立腹したそうです。
もしかすると性格的にも合わなかったのかもしれません。
ですが、後年、栖鳳は楳嶺のことを「きっちりしているが、筋が通らないきっちりさではなかった」というようなことを言っているので、師匠の楳嶺を性格は合わないが尊敬はしていたのでしょう。
栖鳳の弟子の小野竹喬らが、伝統的な文展に疑問を持って国画創作協会を結成しようとしたのですが、栖鳳に迷惑がかかるかもしれないと思い、栖鳳に相談したところ、栖鳳から「志があってするのですから、私のことなど気にする必要はない。この国の美術界のことを考えてのことだろうから、是非やりなさい」と反対されるどころか、逆に熱く応援されたことから結成に至ったそうです。
元々の栖鳳の大らかな性格と、若かりし日の自分と楳嶺とのできごとから弟子の新協会発足を後押ししたのだろうなぁと思いました。
そんな栖鳳ですから、亡くなる前には小野竹喬、金島桂華、徳岡神泉、石崎光揺、西山翠嶂、上村松園が枕辺に揃い、京都の金戒光明寺でのお葬式には横山大観、川合玉堂、川端龍子など東京画壇の錚々たるメンバーも参列したそうです。
というようなことが、展示資料からわかりました。
私としては「ほぉ~」と思ってこれだけで満足だったのですが、やっぱり展示されていた絵の感想も少しは書いておきませんとね


チラシの表紙は「蹴合」です。
この絵は、軍鶏の表情は私としてはイマイチだと思うのですが、この体幹部や足の描き方がスゴイ。
栖鳳は、輪郭(輪郭線ではなく)と色を重視したようですが、この絵はそれを見事に表している1枚だと思います


「大獅子図」(チラシ中段左)はライオンらしく力のある見事な獅子なのですが、松園が栖鳳のライオンのスケッチを縮図帖に模写しているのです。
それを見ると、もっとライオンらしい

栖鳳は写実より、自分の獅子像を作り上げたんだなぁと思いました。
そうやって見ると、ちょっと日本っぽい獅子かも

私が今回一番良かったなぁと思った作品は、「河畔群鷺」です。
二曲一双の作品で、金地に墨絵の老木と舟。
そのそれぞれに計3羽の白鷺がとまって佇んでいるのです。
1羽は飛び立とうとしているのか、羽をやや広げかけています。
余白から静かな緊張感が感じられ、美しい絵でした

色紙に描かれた鶯のヒナのような絵もかわいかったなぁ


今回はミニパンフレットが300円で売っていましたので購入。
見知らぬおじさんが、蕪とねずみの絵の「春寒」(パンフ裏表紙)を見て「この絵が一番好きや」とうれしそうに話しかけてこられました。
一応、笑顔を返しましたが、私は、ほのぼのしていますがこれが一番だとは思わなかったので頷きはしませんでしたけどね(笑)。
栖鳳についてのエピソード満載の展覧会、面白かったです

栖鳳と大観の展覧会を続けて観ることになりましたが、栖鳳は栖鳳自身のことを知る機会に、大観は絵を楽しむ機会になり、両方とも良い展覧会でした


松柏美術館
住所:奈良市登美ヶ丘2-1-4 TEL:0742-41-6666
開館時間:10時~17時(入館は16時まで) 休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間、臨時休館あり
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