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大阪市立美術館 「契丹」展('12.6.2 Sat)

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 先週末は大阪の美術館をいくつか周って来ました
 前の京博界隈の記事もまだ書けてないのですが、会期終了が間近なので先に紹介させてもらいますね。

 大阪市立美術館で開催されている「草原の王朝 契丹」展('12.4.10~6.10まで。観覧料1300円。HPに掲載されている当日割引券を印刷して持参すると100円引き)です

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 中に入ると、ドーンと大きな看板があります。
 やはり黒に金は映えますね。

 契丹って、私はあまり聞きなれない国名だったのですが、「遼」のことだそうです。
 「遼」だと、昔、歴史の授業で習った覚えがあります。
 といっても、名前ぐらいしか覚えてなかったので、ここでちょこっと復習しときましょう(笑)。

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 契丹(遼)は、10世紀から12世紀頃に、遊牧系民族だった契丹(キタイ)族がモンゴル高原東部から満州辺りを領土として作り上げた帝国だそうです。
 太祖は耶律阿保機(やりつあぼき)です。
 「阿保機」とは、あだ名の「アブーチ」(掠奪者)の音訳とされるそうですから、すさまじくいろんな民族を武力で配下に治めていったのでしょうね。

 余談ですが、「耶律」という名前で思い出すのは、陳舜臣の小説にもなっているチンギス・カン(成吉思汗)の文官だった耶律楚材です。
 耶律楚材は契丹人で、耶律阿保機の長男の家系の者だったそうです。

 契丹の二代目耶律徳光(阿保機の次男)の時代に、後晋から北京・大同近辺を割譲され、渤海旧領とあわせて多くの農耕を主とする定住民を抱えることになり、半農半牧の民族になっていったそうです。
 これで国としては大きくなって約200年続いたそうですが、内部では契丹の独自風習を守ろうとする派と中国文化を取り入れようとする派により、ずっと抗争がおこっていたそうです。
 また、貴族の贅沢による堕落によって武力が衰えていき、契丹の国力は次第に落ちていきます。
 その隙をついて、満州の女真族が遼から自立して「金」を建国します。
 そして、ついに金によって滅ぼされたそうです。

 と、ウィキペディアを見て、契丹(遼)国の歴史を簡単になぞってみましたが、契丹は自国で編集した歴史書や史料が少ないため、文化についてなどあまり詳しくわかっていなかったそうです。
 それが近年、契丹の領域での発掘調査が進められ、王族の墓や仏教寺院の遺跡などの新発見があり、契丹の文化レベルの高さが明らかになりつつあるそうです。
 今回は、その調査により内蒙古自治区で発見された約120点の作品の展示となっています。
 世界初公開の作品もありましたよ。

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 前置きがかなり長くなってしまいましたが、ここからが展覧会の内容です(笑)。
 この展覧会は、第1会場と第2会場に分かれているのですが、第1会場はお墓の中という感じで、墓室空間が再現されており、なんか空気もひんやりしているような気がしました。
 木棺(右のチラシの左上)は屋根付の2段重ねの朱塗りで、死者の眠りが妨げられないよう周囲には守護神の顔のような魔除けが取り付けてありました。

 死者には、黄金のマスクがかぶせられています。
 それほど深い彫りではなく、アジア人の顔だなと思います。

 副葬品は大きな琥珀や玉の装飾品。
 あまりに大きいので、生前につけたというよりは、死者のためのものだと思います。
 生前、使っていたのだろうなと思うような机や硯箱などもありましたけどね。
 
 こんな墓室を発見すれば、初めはうれしいでしょうが、落ち着いてくると死者を冒涜しているような感覚に捉われそうです。
 美術館で観ているだけでも、そんな感じがしましたもの。

 そんな中で、第1会場の最後の方に展示してあった「四神」にびっくりしました。
 玄武は上半分が消失していたのでよくわかりませんが、青龍は火を吐くのではないかと思うぐらい、白虎も強さを感じられる精巧な作りになっているのに対し、朱雀だけがなんか威嚇するかわいいハトみたいな造形で、思わず吹き出しそうになりました。
 あの朱雀の鳴き声は、絶対「クァー」か「クェー」ですね(笑)。

 「板画花鳥牧牛図」も、牛の目が丸く黒く漫画チックでかわいかったなぁ。
 「奏楽図・近侍図」のおじいさんの雰囲気がかわいかったです。
 契丹文化は、絵はかわいいですね
 お墓で暗い気分になっていたのが、ちょっとほっこりしました

 第2会場は、金属器、陶磁器、馬具、仏教造像の展示ですが、こちらは美しいものが多く、観ていて楽しかったです。

 「菩薩頭部」などは、「美しい!!」と声に出てしまいそうになるほどきれいでした
 女性っぽい菩薩像でした。

 陶磁器もきれいな物が多かったですよ。
 「白磁穿帯瓶」は、ぽってりとした白磁が柔らかい感じで良かったです。

 第2会場でもいましたよ、ハト(笑)。
 「龍頭瓦・鳳凰瓦」、龍は口を大きく開けて迫力大なのに、鳳凰はやっぱりハトっぽいんです。
 契丹にとってハトは神聖な鳥なのでしょうか?
 それとも、ハトではなくカラス?

 契丹の出土品は金や玉をふんだんに使ったものが多くあり、富んだ国であったことがわかりました。
 また、他国との交流が盛んであったことも伺えました。

 図録は2200円です。
 美術館なのに、図録のところに「契丹文化を知る決定版!」のような内容が書いてあるポップがあり、購買意欲を刺激します(笑)。

 草原の王国契丹って、あまり馴染みがありませんでしたが、少しだけ勉強になったような気がした展覧会でした

 そうそう、常設展では日本の蒔絵や漆工の工芸品が展示されていました。
 時代が違うということもありますが、精緻で美しいものが多く、日本の美意識をなんだか自慢したくなりました(笑)。
 契丹展に行かれ方は、常設展もお見逃しなく

大阪市立美術館
 住所:大阪市天王寺区茶臼山町1-82 TEL:大阪市総合コールセンター なにわコール06-4301-7285(8時~22時)
 開館時間:9時半~17時(入館は30分前まで) 休館日:月曜日(月曜が祝日の場合、翌日休館)、年末年始、展示替え期間
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Author:Ms.れでぃ
主に関西で開催されている展覧会を観に行っています。
ゆるゆる感想を書いていきたいと思います。
ローカルネタになりますが、訪問していただけるとうれしいです。

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