伊丹市立美術館 「フェリックス・ホフマン展」

神戸のBBプラザ美術館、西宮の大谷美術館をまわって最後にやってきたのは伊丹市立美術館です。
こちらでは、「生誕100年記念 フェリックス・ホフマン展 うつくしい絵本の贈りもの」展('11.7.16~8.28まで。入館料700円)が開催されています。


フェリックス・ホフマン(Felix Hoffman 1911-1975)は、スイス生まれの絵本作家です。
はじめは美術の先生をしながら画家活動を行っていたみたいですが、はしかに罹った三女スザンヌのために「おおかみと七ひきのこやぎ」の手描き絵本を贈ったのをきっかけに、重い病気に罹りサナトリウムに入った二女クリスティアーネのために「ねむりひめ」を、長女サビーネの9歳の誕生日に「ラプンツェル」を、末っ子で長男ディーターに「七わのからす」をそれぞれ贈り、子どもたちが大喜びしたため、その後も孫たちのために絵本を描いたようです。
ホフマンのお手製の原画絵本はそれほど美しいとは思わなかったのですが、出版用に描かれた絵の方は美しいですね。
子ども向けの絵というよりは、大人向けのイラストといった風情で、線と色とキャラクターのバランスが良いのです。
この人の絵本なら、大人になっても見れるので大事にしたいなと思える絵ですね

ですが、内容はグリム童話などですので、結構ブラックです(笑)。
西洋のおとぎ話って、いつも思うのですが設定等が残酷でこわいですよね。

この絵は、「7わのからす」という童話の一部分で、親切な星の精からカラスになった兄たちの家に入る鍵となる鳥の足だったか雛の足だったかをもらうシーンですが、鳥の足って、気持ち悪くないですか?
それも、大事にもっていたはずのその足がいつのまにかなくなっており、困ったこの子は自分の小指を切り落として鍵に使うんですよ

それで、兄たちと会い、兄たちの呪いは解けて人間に戻り、みんなで家に帰ってめでたし、めでたしって、これってハッピーエンドなんでしょうか(苦笑)?
「つぐみのひげの王さま」というお話も、高慢ちきなお姫様を改心させるというお話ですが、改心させるやり方が汚くて、つぐみひげの王の性格矯正もした方がいいのではないかと思ってしまいました(笑)。
西洋発信の童話絵本って、童話に含まれている毒や脅し、因果応報などの教訓をきれいな絵などでコーティングして読みやすくしているため、絵がものすごく重要な役割をしているのだと思いました。
やっぱりヨーロッパでは、中世バロックのキリスト教的な視覚にうったえるという手法がそのまま伝統的に受け継がれているのでしょうね。
こんな感想を持ったのも、きれいな絵に引き込まれてお話の内容まで全部読んだからです(笑)。
ホフマンの魅力的な絵を堪能できる展覧会でした


この美術館には柿衛文庫という俳句のコーナーもあります。
上島鬼貫(うえしまおにつら)という伊丹出身の俳人の資料を多く持っているためか、おにつらくんというキャラクターができていました。
かわいいですね

伊丹市立美術館
住所:伊丹市宮ノ前2-5-20 TEL:072-772-7447
開館時間:10時~18時(入館は17時半まで)、休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始、展示替期間
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