京都国立近代美術館 「青木繁展」と常設展

先週、京都国立近代美術館で開催されている「没後100年 青木繁展―よみがえる神話と芸術」展('11.5.27~7.10まで。観覧料1200円)を観てきました。

青木繁は元々好きな画家だったので、楽しみに行ってきたのですが、青木ってこんな絵を描いていたんだと再発見できるような展覧会でした。

展覧会場に入る前のエントランスに、「海の幸」の立体模型が置いてありますよ。
展覧会場に入ると、いきなり「わだつみのいろこの宮」があり、展覧会への期待感が膨らみます。
でも、ちょっと見る位置から絵までが遠いですし、ケースに光が反射してあまりよく見えない。
厳かな感じで展示の雰囲気は良かったので、反射でせっかくの絵があまりよく見えないのは惜しい。
学芸員さん、ライトの当たる位置をちょっと調整してくださいね

「わだつみのいろこの宮」の後は、初期のスケッチなどの習作から晩年の作品まで、年代順に各章立てで展示されています。
青木繁といえば、前述した「わだつみのいろこの宮」や「海の幸」が有名で、若いながらも既に独自の画風を確立していたようなイメージを抱いていたのですが、今回の展覧会を観て、ラファエル前派、象徴主義、印象派、ムンク風、リアリズムなどいろんな画風を勉強していたんだなと思いました。
弱冠28歳で亡くなっているのですもの、まだいろんな絵を学んで吸収している最中だったのでしょうね。
もっともっと勉強して、自分の絵を高めたかったという青木の無念さが伝わるような気がします。
その一方、強烈な自我の持ち主だったこともわかります。
自信をもって出品した「わだつみのいろこの宮」が3等だったことに対して、画壇を痛烈に批判していましたからね(笑)。
青木は筆まめだったみたいで、この展覧会では青木の手紙がたくさん展示されていました。
残念ながら、達筆すぎて字が全然読めなかったのですが、読めたらもっと青木の性格がわかって面白いだろうなと思いました。
図録に活字体での全文を載せてくれているかなと期待したのですが、要約がほんの少し載っているだけだったので残念(青木の手紙の原本は載っています)。
自分の心内をこまめに文章に表すような几帳面さと、うまくいかなかった時の物の考え方は自分以外のもののせいにする外的帰属タイプの性格の持ち主。
友達にするには、ちょっとしんどいかな(笑)。

でも、絵の才能はやっぱりスゴイ。
「海の幸」も、青木の恋人だった福田たねをモデルとしたと言われている「女の顔」も、「大穴牟知命」も、意思のしっかりした強い視線でこちらを見つめてきます。
私たちは、その大きな目による視線によって自然と絵に惹きつけられます。
いってみれば、私たちが絵を見るのではなく、絵の中の人物がこちらを見ている、それも不特定多数ではなく「私」を見ていると感じるぐらいに視線が合います。
世の中には、見てもあまり心にとまらず通りすぎてしまう絵もたくさんありますが、青木の絵は無視することを許さない強さを持っています。
それが青木の作品の魅力なんでしょうね。
そんなに自己主張の強い絵だと、ずっと見ているとしんどくなりそうな気がしますが、展覧会を見終わってもあまり疲労感を感じませんでした。
それは、夭折したため完成作品が少ないせいなのか、それとも、アクが強すぎると感じる一歩手前で抑えている青木のバランス感覚のせいなのかは今となってはわかりませんが、もう少し長生きしてもらって、もっと多くの絵を見たかったですね。
人物をモチーフにした作品が多いと思っていたのですが、意外と海を描いた風景画も多かったですよ。
でも、太陽の光が強い輝きを放ち、眩しい!
風景画を描いても、青木の作品は強いですね(笑)。

この展覧会のキャッチフレーズは「そして青木は伝説となった―。最初で最後の大回顧展」です。
青木の決定版だというこの展覧会は、7月10日までです。
京都展の後、東京のブリヂストン美術館に巡回する予定('11.7.17~9.4まで)だそうです。
京都展では、常設展示で青木の友人だった坂本繁二郎の作品が展示されていましたし、日本画は初夏をテーマにした作品が並んでおり涼やかでした

森村泰昌の「海の幸・戦場の頂上の旗」という映像も流れており、楽しめましたよ。
青木繁展の図録は2300円です。
青木繁が好きな人には、オススメの展覧会でした

京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町 TEL:075-761-4111
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)休館日:月曜
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