京都国立近代美術館 「麻生三郎展」と常設展

京都国立近代美術館で開催されている「麻生三郎展」('11.1.5~2.20まで。観覧料850円)を観てきました。
う~ん、麻生三郎の絵は重い。
色使いも、描かれている内容も暗く重い。

麻生三郎は、初めは前衛的な作品作りから始めたそうですが、ヨーロッパに旅しリアリズムの重要さを再認識したそうです。
戦争を経験したことによるのか、作品の画面は混沌としており、はじめは何が描かれているのかわからないほどです。
それが、見ているとその混沌の中からぼんやりと人の形が浮かび上がっていきます。
一度その形を認識すると、どんどん肉付けされていくように膨れ上がり、新たな形となって見えてきます。

麻生は、リアリズムを追究するあまり、一つの画面の中に外面と内面の両方を描こうとしたようです。
外側だけ、あるいは内側だけでも描き尽す事は大変なのに、それを同等に同時に描こうとすると、閉塞的で混沌とした世界になるのはある意味当然のような気がします。
抽象的な絵になっているため、そこから感じ取れるものは人によって様々でしょう。
チラシには、「人の存在のかけがえのなさ」を訴えかけてくると書いてありました。
私には、あるがままの「事実」が描かれているように見えました。
ですが、作品自体から受け取れるものより、これらの作品を観て私が興味を持ったのは、麻生三郎本人のことです。
自分で志して絵を描く仕事に就いたのに、麻生にとって絵を描くことは楽しかったのだろうか?
麻生にとって絵を描くということは、どういう意味をもっていたのか?
そんな疑問がわくほど、重く沈鬱な印象の絵が多かったです。

風景画や花の絵など、初期の作品は重いながらもまだ明るさがあったのですけどね。
私が美術品に対して求めているものは、疲れた心を元気にしてくれるビタミン剤的な役割ですので、表面的、外見的な美しさに内面がチラッと垣間見える程度で十分です(笑)。
でも、もっと人間を掘り下げて見たい!という方もいらっしゃるでしょう。
そういう方にピッタリの展覧会だと思います。
図録は1800円。展覧会は本日(2/20)までです。
麻生三郎展のあと、常設展も観に行きました。
麻生三郎の絵は、3D画像のように見ているとどんどん見え出すという感じなので、見終わった後、目も心も疲れてしまったのですが、日本画のコレクションを観て生き返ったような心地がしました。
美しい~

西村五雲、堂本印象、都路華香、穏やかで気品があり、観ているだけで癒されます。
やっぱり私はこっちの方が好き

常設展にも、「麻生三郎をめぐる画家たち」という関連コーナーがあったのですけどね。
工芸品のコーナーでは、河井寛次郎の作品が多数展示されてました。
寛次郎の作品も、美しい色遣いの作品が好みです。
この展覧会は、常設展とセットで観るのがオススメです

京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町 TEL:075-761-4111
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)休館日:月曜
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