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伊丹市立美術館 「日本近代洋画への道」展

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 先日、伊丹市立美術館で開催されている「高橋由一から黒田清輝、青木繁まで 日本近代洋画への道―山岡コレクションを中心に―」展('11.1.15~2.27まで。入館料700円)を観てきました。

 この展覧会は、ヤンマーディーゼルの創業者・山岡孫吉氏によって蒐集された日本の近代洋画の作品を中心に約70作家180点の展示になっています。
 この山岡コレクションは、長い間、一部の研究者のみが知る幻のコレクションだったのですって。
 観てみると、知らない画家の名前もたくさんあり、作品自体も好みのものもあれば、そうでないのもありましたが、日本の近代洋画の流れが見れてなかなか面白いです。

 はじめのコーナーは、司馬江漢など、幕末の浮世絵に描かれた風景画や日本にやってきた外国人を描いた風俗画などが中心の展示です。
 この頃の主な目的は、遠近法の習得という感じです。
 京都の三十三間堂の長い奥行きを描いた円山応挙の作品もありましたよ。

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 次は、日本の近代洋画の父・高橋由一のコーナーです。
 高橋由一といえば、やっぱり「鮭」でしょう。
 「鮭」もキャンバスに描かれたものや、紙に描かれたものもあるみたいですが、今回は板絵です。
 板の木目が良い感じで、油彩で描かれた鮭がよけいにリアルに感じました。

 でも、鮭より気に入ったのが、「鯛図」です。
 こちらも板絵なのですが、鯛のうろこの描写がリアルで、鯛の桜色がものすごく美しいのです。
 リアルに描きすぎて、目の上の黒っぽい描き込みが困ったちゃん顔に見えるのですけどね(笑)。
 
 それから絶対に見逃せないのが、「猫図」です。
 水彩で描かれた子猫3匹が寄り添って寝ている姿は、思わず顔がほころんで、和んでしまいます。
 それほど精緻な描き込みではないのですが、猫の毛のふわふわした感じがよくでており、猫に対する優しさが感じられる作品でした。
 高橋由一、やっぱりすごい画家です

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 その次のコーナーは、由一の洋画の師匠であるワーグマンと日本に滞在し、当時の世相を漫画として描いたビゴーの作品群です。
 でも、このコーナーで目を惹いたのはワーグマンやビゴーの作品ではなくキヨソーネの作品です。
 日本の切手や紙幣印刷の基礎を築いた人物で、今回の作品は紙に木炭で描かれた肖像画なのですが、お札に描かれた絵のようにリアルでした
 有名な西郷隆盛の肖像画は、この画家が西郷従道と大山巌をモデルに合成したものだそうです。
 本物の写真みたいな緻密な絵を描くこの画家に興味を持ちました。

 初期の洋画教育のコーナーでは、荒木寛畝、橋本雅邦、山本芳翠などの作品が展示されています。
 徳川慶喜の油彩もありましたよ。なかなか洋風な絵です。

 二世五姓田芳柳の作品は、油彩で歴史画を描いているのですが、笑わない上杉景勝を猿が景勝の真似をして本人を笑わせた「上杉景勝一笑図」などが面白かったです。
 
 このコーナーでは、日本画の題材を油彩で描いたものや、題材も描き方も完全に洋風のものなどいろいろ展示されていました。
 高橋勝蔵という画家の「カルフォルニア風景」や、次の「留学の成果」コーナーの川村清雄の「ベニスの風景」は、この時代の日本人が描いたとは思えない洋風のきれいな絵でした。

 女性画家のコーナーもありましたよ。
 ラグーザ玉や山下りん、渡辺幽香など、ある意味男性画家よりダイナミックな絵もありました。
 新奇の分野だったためか、女性画家も伝統的な日本画の世界より自由に描けたのかもしれませんね。

 そして最後に、明治美術界と白馬会のコーナーになり、黒田清輝、青木繁、藤島武二、浅井忠、岡田三郎助、中村不折など有名どころの作品がずらりと並んでフィナーレを迎えます。
 といっても代表作が並んでいるというよりは、洋画を習得し、それからどう自己表現していくか模索している段階の絵が多いように感じました。
 先ほど述べたように、このコーナーにも画家の名前を見なければ外国人の作品かと思うような完全に洋画の作品もたくさんありました。
 でも、次の時代はそれだけでは済まず、その技術を駆使して今度は独自の作品に発展させていかなければなりません。
 画家たちのそういった努力が感じられる展覧会だった思います。

 黒田清輝、久米桂一郎、岡田三郎助、和田英作などの作品の前に、師匠であるラファエル・コランの作品を展示しているところも面白かったです

 図録は1800円でした。
 ほとんど初めて見る絵でしたし、知らない画家も多かったので図録は欲しかったのですが、白黒写真も入っていたのがちょっと残念でした。

 日本の近代洋画の展覧会は今までもありましたが、これほどの展示数で振り返る展覧会はそんなに多くないと思います。
 なかなか興味深い展覧会でした

伊丹市立美術館
 住所:伊丹市宮ノ前2-5-20 TEL:072-772-7447
 開館時間:10時~18時(入館は17時半まで)、休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始、展示替期間
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Author:Ms.れでぃ
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