兵庫陶芸美術館 「モースが見た「兵庫のやきもの」展」('11.1.10 Mon)

兵庫陶芸美術館では、モースが見た「兵庫のやきもの」展('10.10.30~'11.3.21まで)というテーマ展が同時開催されていました。
モースとは、大森貝塚を発見したエドワード・シルヴェスター・モースのことです。
モースは動物学者で、日本に腕足動物の調べるため私費で来日し、文部省に採集の許可を得るために横浜駅から新橋駅へ向かう汽車の中から貝塚を見つけたそうです。
それがきっかけで東大で教鞭をとったそうですが、貝塚の土器から興味が広がって日本の陶芸について学び、陶器の蒐集を行っていったそうです(きっかけは、研究対象の貝の形の陶器を買ったら、安物だと知人に指摘されたことから勉強を始めたとか)。
蒐集した日本全国の陶器は約5000点にも上り、それらの陶器コレクションはボストン美術館に譲渡し、モースコレクションとして管理し、モース自身によって産地や窯、陶工別に整理・分類され、窯印や銘なども丹念に記録した目録にまとめあげたそうです。
モースは、浮世絵もたくさん集めてボストン美術館に寄贈したと以前に聞きました。
民具もかなりの数を収集したそうで、興味を持った順番は、焼き物→民具→浮世絵の順でしょうか?
もっとも、ボストン美術館の浮世絵は、モースの友人のビゲローが最も多く蒐集したそうなので、浮世絵は途中で断念してビゲローに任せたのかもしれませんね(あくまで勝手な推測です)。
今回の展覧会では、そのモースの「日本陶器目録」に記載された兵庫県下の焼き物を、兵庫陶芸美術館の所蔵品をもって紹介しています。
ですから、実際のモースコレクションの作品とは違いますが、同じ産地の焼き物なので似た系統の作品が展示されていると思われます。
展示されていた焼き物は、平焼、三田焼、出石焼、丹波(立杭)焼、朝霧焼、舞子焼、明石(人丸窯)焼、須磨焼、東山焼、赤穂焼です。
平焼は、賀集平(かしゅうみんぺい)が創始した淡路島の焼き物です。
京焼きの色絵陶器や中国陶磁を写したということで、展示されている作品も絵付けがすごく美しかったです。
数点展示がされていたのですが、その中でも「色絵海老文茶碗」や「色絵秋草文茶碗」のえびや秋草の描写がすばらしかったです。
三田焼は、この美術館のある篠山市今田町の南側の三田市の焼き物で、青磁で有名だそうで展示されているのも美しい青磁の作品でした。
出石焼は、豊岡市の焼き物で、日本でも珍しい白磁が中心の焼き物で、当然展示品も白磁でした。
展示品は白磁に籠目だったかを貼り付けていました。
「白磁貼付籠目牡丹文籠形花生」という作品で、明治時代の作品なのでちょっと凝ってますね。
そして、丹波(立杭)焼です。
この美術館の周辺で作られる焼き物で、主に生活雑器を焼いてきたそうです。
まだ書いてなかった思うのですが、相野駅からこの美術館にバスに乗って来るまでの間に立杭焼の工房や登り窯をたくさん見ることができます。
小堀遠州等の影響により茶器などを焼くことが多くなり、生活雑器が作られることになったのだと思います。
展示品も壷や茶碗、皿だけでなく、徳利、小鉢、小壷など様々のものがありました。
その中でも「立鶴文徳利(一対)」は、形が美しいだけでなく、絵がまるで応挙の鶴のように写実的で美しかったです。
この他にも形が変わっているものや、模様が変わっているものなど、いろいろあり面白かったです。
朝霧焼、舞子焼、明石(人丸窯)焼、須磨焼、東山焼、赤穂焼など播州地方の焼き物は、今はあまり作られていないのか、展示数が少なかったですが、それぞれ良かったですよ。
焼き物は学べば奥が深そうで、モースが魅せられたのもわかるような気がしました。
ミニ企画展でしたが、面白かったです


この美術館、初めて来たのですが、広々として気持ちよく、展示の仕方も解説もわかりやく見やすく良かったです

今回は雪でよくわかりませんでしたが、庭にもオブジェなどもありそうな感じです。
見応えがあるので、ゆっくり楽しむことができる美術館だと思いますが、バスの便が1日4~6便しかないので不便です。
近くに立杭焼きの工房や温泉などもあるそうで、以前に行った播州清水寺も同じバス路線なのですが、バスの時間に縛られるので、他と一緒になかなか行けないのが残念でした。
もう少し便数を増やしていただければ、1日楽しめるだろうな~。
冬以外は、車をお持ちの方は、車で行かれることをオススメします(冬は雪が積もります)。
兵庫陶芸美術館
住所:兵庫県篠山市今田町上立杭4 TEL:079-597-3961
開館時間:4月~10月は10時~19時、11月~3月は10時~18時(7~8月の特別展開催中の金・土、4/29~5/5のGW期間は21時まで開館。いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館日:月(月曜日が祝休日の場合は翌平日)、年末年始(12月31日と1月1日)
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