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午前10時の映画祭③ 「アラビアのロレンス」

 さて、名作案内の最後は「アラビアのロレンス」('10年26本目)です。
 この映画は、オスマン帝国からアラブ独立に関わった実在の人物T・E・ロレンスが主人公の物語です。
 1962年の作品で、今までに何回かTVで観ていますが、砂漠のシーンが美しいので、是非映画館で見てみたいと思ったのです。

 思ったとおり、画面いっぱいに続く果てしない白い砂漠、照りつける太陽、真っ青な空と地平線、言葉にならないほど素晴らしいです。
 まるで、画面から砂漠の熱い風が吹き付けられるていると感じるほどの大迫力の映像美でした。

 砂漠があまりに広く美しすぎて、観ていると、こちらまで渇きと目眩を感じ、ロレンスの砂漠に魅せられた気持ちと、物事の判断基準が通常から狂ってくる様子がリアルに伝わってきました。

 イギリス軍人のT・E・ロレンスは、学生時代考古学を学び、研究のためアラブを周ったことがきっかけで、アラビア語やアラブ文化に詳しくなり、軍ではアラブ局に派遣されます。
 アラブでは、オスマン帝国からアラブが独立するため、アラブ反乱を画策していますが、自由の民であるベドウィンは自分の種族が第一で、なかなかアラブのためという大義名分ではまとまりません。
 そこにロレンスが現れ、うまくベドウィンをまとめあげ、死の砂漠越えを行い、アカバ攻略を成功させます。
 アカバを攻略することで、トルコ側の鉄道に攻撃を与え補給路を断つことができ、アラブ軍の勝利でダマスカスの入城を果たすことができるのです。
 ですが、ロレンスの祖国英国の目的は、トルコ解体による領土の拡張で、そのためにアラブを支援しているのです。
 それに対して、ロレンスの目的はアラブ民族の完全なる独立。
 母国とアラブの間でロレンスは葛藤し、じわじわと精神が病んでいくように私には見えました。
 
 ロレンスはアラブ側に立ち、アラブの権利を主張するため、イギリス軍より先にダマスカス到着に成功したのですが、砂漠のベドウィンたちに町を管理する能力はなく、たちまち電気・水道・病院などが止まり、結局、イギリス軍に頼るしかない状況になったところで、アラブの指導者ファイサルが到着して、少しでもアラブに有利になるようにイギリス軍と交渉に入ります。
 こうなると、どちらの情報にも詳しいロレンスは邪魔者になり、それを感じたロレンスはアラブから手を引き、車に乗って去っていきます。
 その車を1台のバイクが追い越してゆき、うらやましそうな顔でバイクを見ているロレンス。
 映画はここで終わります。
 それから数年後のロレンスの死は、バイク事故でした。
 映画はこの事故シーンから始まるのです。

 映画では、アカバ攻略とロレンスの揺れる心情をメインに描いて、美しい雄大な物語にしていますが、実際問題、ロレンスがアラブ独立に多大な力を貸したことは事実なのですが、彼がイギリス軍人で、アラブ独立は英国の利益として使われ、今も続いているパレスチナ問題もここから端を発していることを考えると、ロレンスの行為が良かったのかどうか・・・。
 いや、ロレンスの行為を云々言うより、大国のエゴイズムを問題にするべきなのでしょうね。

 ロレンス役のローレンス・オリビエ、真っ青な目と優雅な物腰が、実際のロレンスのイメージとピッタリでした。
 段々と自我が崩れていくロレンスに対し、どこまでも強くまっすぐなハリト族のアリをオマー・シャリフが好演してました。
 アリの衣装は黒です。
 何色にも染まりやすい白のロレンスは、どんな色にも染まらない黒のアリがうらやましかったでしょうね。
 白と青と黒の世界、美しかったです

アラビアのロレンス 1962年 イギリス コロンビア映画 デヴィッド・リーン監督 227分
 知識がないというのは悲しいことだなと思った、Ms.れでぃの勝手な映画採点:70点
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