京都 承天閣美術館 円山応挙「七難七福図巻」特別展示

京都御所の今出川通りを挟んで向かい側にある相国寺の境内に、承天閣(じょうてんかく)美術館があります。
こちらでは、「館蔵の名品展―書画と工芸―」展('10.7.3~'11.3.27まで。入館料800円)が開催されているのですが、'10.9.18~12.12までの期間限定で、円山応挙の「七難七福図巻」全三巻が一挙公開されています。
それを目当てに、こちらの美術館に行ってきました。

入口から美術館まではお庭になっていて、少し散り際でしたが紅葉が美しかったです


紅葉の通路を通っていくと、建物があります。
こちらは、館内に絨毯が敷いてあり、靴を脱いでの見学になります。
展示会場は2室から成っており、第一展示室からの見学になりますが、この展示室は今回の展覧会のタイトルどおり、書画と工芸品が展示されています。
相国寺は、開基(創立者)は足利義満、開山(初代住職)は夢窓国師で、臨済宗相国寺派の大本山のお寺です。
有名な金閣寺(鹿苑寺)、銀閣寺(慈照寺)は、このお寺の山外塔頭なんですよ。
ということで、この展示室には夢窓国師の墨跡(禅僧の筆跡)や頂相(禅宗の僧侶の肖像画)、足利義満の木像、長谷川等伯の屏風、工芸品は茶道具などが展示されていました。
夢窓国師の頂相を見てみると、線の細い人のような印象ですが、墨跡は骨太のしっかりとした字で、豪胆な感じがします。
やはり、7回も天皇から「国師」の号を賜るだけのことがある、しっかりした人物だったのでしょうね。
足利義満像は、どれも八の字眉です。
いつもこんな困ったちゃん顔をされていたのでしょうか(笑)。
等伯の「探海騎驢図屏風」は、68歳の時の作だそうですが、木も岩もカクカクしていて硬い絵でしたね。
展示室の中に「夕佳亭」という茶室の展示がされ、茶道具などが一通り揃っており、野々村仁清作の茶碗や茶入れなどが展示されています。
お茶を嗜んでおられる方にとっては、ものすごく贅沢な空間だと思われるのではないでしょうか。

第2展示室には、今回のお目当ての応挙の「七難七福図巻」の絵巻物が全部広げて展示されています。
この絵巻物は、大津市の円満院の祐常門主の依頼で描いたもので、応挙に自らが見聞き体験し、目の当たりのごとく描写してほしいと注文され、4年がかりで描きあげた応挙36歳の時の作品だそうです。
1巻約15m、天災と人災を描いた「難」2巻と「福」1巻、下絵も合わせて全て一挙公開です。
「福」からの展示で、「福」は、貴人の婚礼、花見、舟遊びが中心に描かれています。
のんびりと皆楽しそうですが、庶民にはあまり関係のない話です。
しかし「難」の巻は、ほとんど農民・町民が題材になり、天災巻は地震や大火で逃げ惑う人々、人災巻では強盗や追いはぎ、殺人など、かなり血生臭い内容になっており見ていて寒気がしてきます。
あっさりした色の絵の中で血の色だけが鮮明で、怖さがより増して感じます

この作品が完成したのは1768年です。
4年の年月がかかっているので、1764年頃から描き始めたということですが、この時の将軍は第10代徳川家治。
各地で百姓一揆が多発し、反幕思想の人物の弾圧事件が起こっています。
1767年には田沼意次が側用人になっており、締め付けも厳しく、農民には受難の時代だったみたいです。
現代の私たちが見れば、悪行をすれば来世でこんなひどい目にあうかもしれないよという意味合いの方に取れますが、この時の農民たちにとっては、「難」巻では自分たちの境遇がリアルに描写され、「福」巻は善行を積めば来世は貴人に生まれ変わり、幸せになれるかもという救いだったのかもしれませんね。
なかなか一挙公開というのはないと思いますので、明日(12/12)までですが興味のある方は観に行ってみてくださいね

この他にも、伊藤若冲の鹿苑寺(金閣寺)大書院障壁画の展示もありますし、鎌倉時代作ですが、古いタイプの不動明王像の展示もありました。
工芸品としては、白薩摩錦手牡丹文茶碗はきれいでしたよ~


美術館の外に出ると、紅葉が輝いていました。

今も悲惨な事件が多く起こっているので、現在は応挙の描いた「福」の世界なんだろうか?という気もしますが、少なくとも当時の人から見たら極楽な世界に見えるでしょうから大切にしなければと、美しい紅葉を見ながら思いました。
承天閣美術館
住所:京都市上京区今出川通烏丸東入上ル相国寺門前町701 TEL:075-241-0423
開館時間:10時~17時(入館16時半まで) 休館日:展示替え期間('10.12.13~12.14)、年末年始('10.12.27~'11.1.5まで)
スポンサーサイト