京都 中信美術館 石本正新作展

京都府庁の正門から西に100mほど行ったところにある、中信美術館に行ってきました。
この美術館は京都中央信用金庫が経営する美術館で、多分常時開館はしておらず、年に何回か企画展示されているのだと思います(未確認ですが)。

今回は「石本正 新作展―視線のかなたに―」展('10.10.26~12.11まで。入場無料)が開催されていました。
日本画家・石本正(いしもとしょう)は、1920(大正9)年島根県で生まれた画家で、女性・花・ふるさとを主題にした作品を多く描いています。


今回は新作展ということで、まだ未完の作品も展示されていましたが、未完といっても完成に近い状態でどれも美しかったですよ。
石本正といえば、女性像が魅力的です。
裸婦が多いのですが、肌の色の質感がすばらしいのです。
若く健康的な肢体に少し憂いを含んだ顔の表情は、女性の内面の複雑さを表しているように思え、石本の女性像を一層魅力的なものにしています。
どの女性も顔が似ていますので、これらの女性が石本の理想の女性像なのかもしれませんね。
「祈り」という人魚(?)のような女性を描いた3枚のシリーズの作品があったのですが、このシリーズだけは少し他の女性と違っており、幻想的な感じがします(石本のカテゴリーでは「女性」ではなく、「ふるさと」に分類されています)。
祈り(二)は、フォンテーヌブロー派の「ガブリエル・デストレとその妹」という作品を、祈り(三)は、クリムトの「水蛇」をなんとなく連想させます。
祈り(一)も一面六臂ですし、何か言わんとするものがありそうですが、何なのでしょうね。
魅惑的ですが、不思議な作品でした。
花は、未完の「牡丹」が花の形がぼやけて牡丹に見えないのですが、紅葉のように真っ赤な赤が印象的な作品でした。
今回観た石本さんの花の作品は、自己主張の強い花々で、おとなしい印象の女性像とはまた違った魅力を持っていました。
こういう捉え方も面白いですね。
最後に、ふるさとを主題にした作品の中で、今回特に目を引いたのは「ぼっこう」という作品です(左のチラシの上の作品)。
ぼっこうとはカサゴという魚のことで、関西ではガシラ、島根ではぼっこうというそうです。
周りの小魚を全部吸い込みそうなほど大きく口を開いている状態を、正面から描いています。
ユーモラスでもありますが、飲み込まれそうでちょっとコワイ気もしますね。
チラシに「視覚にとらえたものをただ単に描いても決して絵画にはならない。視覚のかなたに隠されているものをとらえて、それを画面に定着させたとき、はじめて絵画が誕生する。」という石本さんの言葉が書かれていました。
石本さんの女性・花・ふるさとを観る視線の彼方には、複雑さ、生命の力強さ、神秘さが写っているのではないかと思った石本正の新作展、良かったです

島根の浜田市には、石正(せきしょう)美術館という石本さんの作品を収蔵・展示している美術館も2001年にできたのですが、遠いのでなかなか行くことが出来ませんので、京都でしかも無料で新作展を開催してくれる中信美術館さんには本当に拍手です

展覧会は明日12/11(土)までですので、興味のある方はお見逃しなく

中信美術館
住所:京都市上京区下立売通油小路東入西大路町136-3 TEL:075-417-2323
開館時間:10時~17時(入場は16時45分まで) 休館日:月曜
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