サントリーミュージアム天保山 「ポーランドの至宝」展('10.10.30 Sat)

奈良のお寺巡りシリーズを書いている途中ですが、明日で会期が終わる展覧会を今日(10/30)観に行ってきたので、先に紹介させていただきますね。
(この日は台風だったので、傘立てが看板の前にいっぱい。笑)
行ってきたのは、サントリーミュージアム天保山 「ポーランドの至宝 レンブラントと珠玉の王室コレクション」展('10.10.6~10.31まで。入場料1200円)です。
この展覧会は、現在世界遺産になっているポーランド王国時代の首都でもあったクラクフの旧市街にあるヴァヴェル城、首都ワルシャワのシンボルのワルシャワ王宮に伝わる絵画、工芸、彫刻などの王室縁の美術品に、国立美術館所蔵の19世紀のポーランド絵画、ポーランドの偉人であるコペルニクス、ショパン、キュリー夫人に関する資料などを含めた約140点の展示でした。
王室美術品といえば、巨大なタペストリーや豪華で装飾の多い金銀器などがどこの国にもありますが、こちらにもありました。
お城の部屋は高さもあるので、こういうタペストリーを掛けても見栄えがするのでしょうね。
一種の権力の象徴の意味もあるのかもしれません。
工芸品の中には、男女のサテュロスの小像があったのですが、女のサテュロスというのは初めて見ました。
珍しいですね。
そのコーナーを過ぎると、いきなり今回の目玉展示品のレンブラントの作品2枚の展示です。
「机の前の学者」と「額縁の中の少女」です。
「机の前の学者」はレンブラントらしく、光と影のコントラストが人物を輝かせています。
人物はもちろん上手な表現なのです、胸飾りとノート(?)がすごく質感を感じさせます。
特にノートは目を惹きますね。

「額縁の中の少女」はだまし絵になっていて、絵の中に額を描き(またこれがリアル!)、その額の上に少女が手を置いているので、少女が絵から出てきそうな感じです。
レンブラントの他にもだまし絵があったのですが、それは全然立体的でないのでだまし絵には見えず、やっぱりレンブラントは違うなと思いましたね。
絵の中の額縁の右端を盛り上げて描いているのですから、芸が細かいです。
もちろん、清楚なこの少女も魅力的に描かれています。
この2点は日本初公開だそうですが、目玉展示品となるだけのことはありました


ベルナルド・ベロット(通称カナレット)というヴェネツィア生まれの画家の風景画も細かく美しい描写で良かったです

写真のない時代の観光案内ガイドブックに載っていそうな絵です。
そして19世紀のポーランド絵画コーナーになるのですが、ポーランドの絵画ってあまり観たことがなかったのですが、なかなか良いですねぇ。
とくに、ヘンリク・シェミラツキの作品は、古代ローマ・ギリシアをモチーフに描いた絵で、女性が美しく、題材に合っているように思えます。
数枚展示されてましたが、どれも良かったですよ

肖像画も多く展示されてました。
池田理代子の漫画の「女帝エカテリーナ」や「天の涯まで ポーランド秘史」にでていたポーランドの最後の国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキをモデルにした肖像画もありました。
イメージどおり優しそうな人です。
この人は、ロシアのエカテリーナ2世の元恋人だった人物で、ポーランドに対するロシアの影響力を強くするために、エカテリーナ2世がバックアップして国王になったそうです。
エカテリーナはドライで自国を有利にするためなら簡単に人を切り捨てますが、この国王はそうではなく、ロシアに対して強く出ることができず、結局ポーランドの領土はロシアやプロイセン、オーストリアに分割され一時消滅してしまいます。
ですが、決して凡庸な人ではなく、文化や教育に関する政策では国に大きく貢献していたみたいで、世界最初の国家教育省である国民教育委員会を設立したり、憲法の制定もしたみたいですよ。
ある意味、ロマンティストの理想主義者だったのかもしれませんね。
この他にも肖像画は古典的な様式のものから、初期のモネやルノワールに似たような肖像画まで様々で、観ていて楽しかったです

他の人もきっと楽しかったのでしょうね。
夕方の5時過ぎぐらいに行ったのにすごい人で、展覧会場は大賑わい。
ワイワイガヤガヤとしていました。
おかげで私たちが少々小声で感想を話しても、全然目立ちませんでした(笑)。
ポーランドの美術品って、あまり観る機会がなかったので今回その一端を観ることができて良かったです(図録は2000円です)

ですが、出口の辺りでポーランドの中世から近代あたりの歴史のようなものを紹介したビデオが放映されていました。
ポーランドの歴史は分裂と侵攻の歴史で、一時期は国の消滅までいき、それをどうにか独立回復までしたのに、またヒトラー率いるナチス・ドイツによる侵攻で、ワルシャワの街は壊滅状態になりました。
ドイツによる街の破壊を予期していた建築学部の学生たちは、必死で町の建物の正確な図面描き、それが第二次世界大戦終了まで残り、その図面を基にしてワルシャワの街は以前と同じように復興することができたそうです。
そんな歴史を考えると、これらの美術品は単なる観て良かったで済まされる美術品ではないですよね。
まさしくこれらの美術品は、ポーランド国民が必死で守り続けてきた国の文化であり、誇りなのだと思います。
たくさんの人が観に行くことは良いことですが、ポーランドの国に対する敬意を持って観る必要がある展覧会だと思いました。


IMAXシアターの「ゴッホ:天才の絵筆」も10月31日までです。
ゴッホのたくさんの絵がアップで観れますよ


IMAXシアターって、やっぱり球形なんですね(笑)。
サントリーミュージアム天保山
住所:大阪市港区海岸通1-5-10 TEL:06-6577-0001
開館時間:今回の展覧会は8時半~19時半(入館は19時まで) 休館日:月曜、展示替え期間
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