国立国際美術館 「マン・レイ」展('10.10.2 Sat)

INAXギャラリーのあと、中ノ島の国立国際美術館で開催されている「マン・レイ展 知られざる創作の秘密」('10.9.28~11.14まで。観覧料1500円)を観てきました。

この展覧会は、マン・レイ財団所蔵の写真、絵画、彫刻、デッサン、所持品などを一堂に集めて、2007年からヨーロッパを巡回している展覧会だそうです。
その内容に加え、日本展だけに出品される約70点を含めた約400点の展示になっており、見応え十分の展覧会になっています。
マン・レイといえば、シュルレアリスム系の写真家だと思っていたのですが、今回の展覧会を観て、総合芸術家だったということがよくわかりました。

写真を始める前は画家を目指していたためか、水彩画などもよく描いており、色の配置などを見ると色彩感覚も優れていますし、デッサン力もありそうです。
絵画だけでなく、チェスなどのオブジェもデザイン的に面白いものを作っており、多才であることはよくわかりますが、マン・レイに一番あった表現方法はやっぱり写真ではないですかねぇ。
マン・レイの撮ったポートレートは、ちゃんと被写体の本質を写しているのですが、どれも小粋で、センスがいいです。
どのモデルも撮られることを喜んでいるように見えます。
人間は誰でもプラス、マイナスの両面をもっていますが、マン・レイはそのプラス面をうまく引き出し、それを瞬間的にカメラに捉えているので、撮られた本人はもちろん、見ている私たちも「あっ、いい感じの写真♪」と思うような作品が多いように思います。
それが、ヴォーグなどの商業誌でも成功した理由ではないでしょうか。
ジャン・コクトーがモデルのポートレート「ジャン・コクトー」は、ちょっとポーズを決めすぎて、ひとつ間違うと嫌味になってしまうところを、カッコイイと思わせてしまうのですからすごいです

「車に乗るフランシス・ピカビア」なんて、思わずこっちが笑ってしまうぐらいめちゃうれしそう(笑)。
「アルベルト・ジャコメッティ」の写真は、ものすごく小さい。
ジャコメッティの作る彫刻は、無駄を削ぎ落として骨と皮だけになったような細い作品ばかりなので、マン・レイはわざと小さな写真を撮ったのかなとか想像してしまいます。
「キキ・ド・モンパルナス」、モンパルナスのキキとして、キスリングなどいろんなエコール・ド・パリの時代の画家のモデルをしていて、どの作品でもきれいに描いてもらっている彼女ですが、マン・レイの写真の彼女が一番美しいのではないでしょうか

マン・レイは、通常のポートレートだけでなく、写真を使っていろんな作品を作り上げています。
「黒と白」は、白人のモデルに黒いマスクを持たせたものと、それを白黒反転させた作品の2種を作っています。
マン・レイの有名な作品ですが、実物は初めて見ました。
美しい作品でした。
美しいだけでなく、白と黒は紙一重という思想も含まれているのかも知れませんね。
女性の裸の背中をヴァイオリンに見立てたマン・レイの有名な「アングルのヴァイオリン」は今回リトグラフしか来てなくて残念!
マン・レイの物の見方がうかがえる作品だったので、観たかったですね。
今回の展示作品は基本的に白黒写真が多かったのですが、カラー作品もありました。
黒の額縁に黒い縁に鮮やかな色のカラー写真、マン・レイ考案の色彩定着技法によるカラー・ポジフィルムの「ジュリエット・グレコ」、1956年の作品ですがモダンで美しい

人物が浮かび上がるように見えます。
この技法は、色褪せ避けるためにマン・レイが考えた方法だそうですが、この時代で色の劣化を嫌がる感性は、色彩感覚の優れたマン・レイの「画家」の部分からきているものなのかもしれませんね。
マン・レイは、気に入ったものを何回も違う形で表現しようというところがあり、何年経とうが思いついた時に方法を変えて試しています。
「無頓着、しかし無関心ではなく」という言葉を残していますが、言葉通りの方法で自分の考えを大切にした人だったのでしょうね

図録は3000円です。
写真がメインだということと、作品数の多さから考えると、高いのか安いのかはちょっと一概に言えないです。
こんなに多くの作品が来ているとは思ってなかったので、ちょっと時間が足りず、マン・レイ作の映画を全部観ることができませんでした。
これから行かれる方は、たっぷり時間をとって観に行ってくださいね。
大変見応えのある興味深い展覧会でしたよ

国立国際美術館
住所:大阪市北区中之島4-2-55 TEL:06-6447-4680
開館時間:10時~17時(金曜は19時まで。入場は各30分前まで) 休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌日休館)
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