神戸市立小磯記念美術館 「画家岸田劉生の軌跡」展('10.7.10 Sat)

神戸で映画を観た後、六甲ライナーに乗り、六甲アイランドに行きました。
まずは、ここに来れば必ずといっていいほど寄る「インド村」というインド料理屋さんでお昼ごはんを食べようと楽しみにしていたら、なんと店長が結婚するので7月下旬までお店をお休みするという貼紙が!
ガーン!
お腹を空かせて来たのに・・・。
おめでたい話なので、ここは喜んであきらめようと思って他のお店に行ったのですが、パッとしたお店を見つけられず、なんかイマイチな食事をした後、気を取り直して向かったのが小磯記念美術館です。

こちらでは、「画家岸田劉生の軌跡-油彩画、装丁画、水彩画などを中心に-」という展覧会('10.6.27~9.12まで。800円)をやっています。


岸田劉生は好きで、劉生の展覧会は結構行っています。
今回は、笠間日動美術館のコレクションの中から、油彩、水彩、素描、装丁画や資料120余点が展示されていました。
今まで劉生の展覧会は、油彩画や麗子像を中心にした作品を紹介するものが多かったので、劉生は大正時代の洋画家だと思っていたのですが、意外といろんな手法で絵を描いていたというのがわかり、洋画家と単純にはいえない、才能豊かな画家だということがわかりました。
今回展示されていた作品の中の「代々木風景」は、水彩画なのですが、なんか見ててほっこりするような絵でした

紙本彩色の「猫図」の猫は、かわいくはないですが味があります

紙本墨画淡彩の「白桃」は、どこに白桃があるのかわからない抽象的な絵でした。
「綿うさぎ之図」は、古典的な日本画のようでありながら、どこかモダンさも感じられる掛軸です。
水彩画や日本画、素描など、どれも味がありなかなか良い感じですが、でもやっぱり劉生は洋画での表現が最も適していたのではないかと思います。
劉生の写実技法を、油彩が一番引き立たせているように思うのです。
劉生の洋画は、重さと色の明るさとのバランスが絶妙で、重いけど決して暗くはなく、見やすいです。
見やすい分だけ、描かれている対象を私たちもじっくり見てしまいます。
じっくり観ると、いろんなことが見えてきて余計にリアルに見えます。
そこには対象の内面や本質までも描かれているように思えるんですよね。
単なる表面的な美しさだけでない、対象がもっている内なるもの、というより、劉生が対象に抱いてる感情が読み取れるような気がします。
その際たるものが、麗子像でしょう。
手法はいろいろでも、描いているのはやはり麗子が多く、劉生は娘の麗子のことがかわいくて仕方なかったんだろうなということがヒシヒシと伝わってきます。
武者小路実篤の「友情」の表紙絵には、麗子が4人も描いてありました。
本とは全く関係がないのにね(笑)。
デロリ系で自分の娘のことをよくこんな風に描けるなというような麗子像もありますが、よく見るとどこか愛らしさやおかしみが感じられ、麗子だったら許容してくれるだろうという劉生の娘への絶大な信頼感が窺われ、そこに親子の絆が見て取れます。
この展覧会は、劉生の芸術に対する考え方を確立するための模索と、麗子への愛情がテーマとして紹介されている内容でした。
それはすなわち劉生の生き方であり、タイトルどおり、まさに「画家岸田劉生の軌跡」ですね。
図録は少し薄めですが、1500円だったと思います。
この展覧会、観て本当に良かったです!
劉生の展覧会のほかに、小磯良平の作品を展示している部屋もあり、そこではこの展覧会と連動して、小磯良平の油彩や、素描、装丁画が展示してあり、小磯と劉生を比較することもできるようになっています。
小磯もデッサン力に優れた画家なのですが、作風は劉生とは全然違って、小磯の作品は明るさの中に落ち着きがあります。
どちらが良いとかの問題ではなく、劉生とは求める「美」が違うのでしょうね。
小磯の作品も良品が揃っているので、見応えがありますよ


小磯のアトリエです。
紫陽花がまだ美しく咲いていました。
この風景は、小磯の方が似合うかな

劉生と小磯の作品が両方楽しめるオトクな展覧会でした。
とっても良かったですよ

神戸市立小磯記念美術館
住所:神戸市東灘区向洋町中5-7 TEL:078-857-5880
開館時間:10時~17時(特別展開催中の金曜日は18時まで。入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜、年末年始(12月29日~1月3日)他 (開館時間、休館日は臨時に変更する場合あり)
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