京都国立近代美術館 「稲垣仲静・稔次郎兄弟展」('10.6.27 Sun)

今日は、岡崎にある京都国立近代美術館に行ってきました。

うちは猫を飼っているためか、どうも猫の絵や猫キャラに興味を持ってしまいます。
よその美術館で、猫の絵が描かれているポスターを見ました。
それも目つきのワルい猫(笑)。
でも、このポスターを見て、絶対観に行こうと思いました。
それが「稲垣仲静・稔次郎(いながきちゅうせい・としじろう)兄弟展 ―夭折の日本画家・型絵染の人間国宝―」('10.5.18~6.27まで。観覧料700円)です。
ちょっといろいろ忙しくて、最終日の今日、やっと行けました。

稲垣仲静も稔次郎も初めて聞く名前なのですが、日本画家であり、工芸図案家でもあった稲垣竹埠(ちくう)の息子で、2人とも父の跡をそれぞれが継ぎました。
兄の仲静(1897-1922)は、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸大)在学中に第2回国画創作協会展へ「猫」を出品して画壇の注目を浴び、将来を期待されていたのですが、腸チフスにかかり25歳の若さで夭折した日本画家です。
25歳の若さで亡くなったので、描かれている絵の数自体が少ないのですが、写実的な絵が多く、ものすごく対象をよく観察していて、それを再現する技術も持っている画家だと思いました。
ですが、まだ成長の途中という感じもしました。
たとえば、「豹」という作品、ものすごく精悍な豹が3匹描かれているのですが、どれも単体に見えてしまうのです。
もし、もっと長生きして絵を描き続けていれば、「個」ではなく「集団」として、調和のとれた作品になっただろうなと思いました。
本当に才能のある人なので、長生していたらどんな絵を描いただろうと皆が楽しみになるほどの画家だったと思います。
腸チフスで亡くなったということは、いわば不慮の事故みたいなものなので、まだ死に対する感情はないはずなのですが、不思議と「生」を印象づける作品が多かったです。
「軍鶏」という作品は、2本足ですくっと立っている軍鶏の絵なのですが、その姿は誇り高い年老いた孤高の戦士という風情です。
「鳴ける猫」は、まだ独り立ちできていない猫が、必死に助けを求めて鳴く姿を適確に表して
います。
それは、まさに生への希求といえるでしょう。
そうそう、猫といえば、この画家の描く猫は、飼い猫でありながらもどこか誇り高く、野性味を失っていないように感じるんですよね。
甘くない猫というか(笑)。
舞妓さんなどの絵は、甲斐庄楠音の影響を受けているようなデロリ系です。
本当に、この人はいろんなことを勉強中だったのでしょうね。
いろんなことを学んだ後、この人はどんな絵を描いたのでしょうか・・・。
弟の稔次郎(1902-1963)は、京都市立美術工芸学校図案科卒業後、東京三越本店図案部に勤務しますが、兄が急逝したため京都に戻り、松坂屋京都支店図案部に勤務し、捺染友禅の図案を担当したそうです。
そこで染色技法を独学し、昭和6(1931)年に同社を退職し、染色工芸家として独立したそうです。
昭和14年、国画会賞を受賞。
それ以降、工芸家として活躍し、単純化された形態を組み合わせ、リズムよく反復することによって、多様な自然の諸相を表現できる型絵染で制作を行うようになり、昭和37(1962)年に型絵染の人間国宝に認定されたそうです。
初めの方に展示されていたのは、明るい色使いの楽しそうな絵柄のものです。
私は染色には疎いのであまりよくわかりませんが、切り絵のようにも見えます。
京都の風景が多かったですよ。
私が美しいと思ったのは、後半に展示されていた着物の柄です。
草木の模様などは、美しくて素敵でしたよ。
稔次郎の作品は、明るく美しいですね。
染色の方はよくわからないので、仲静に偏った感想になってしまいましたが、稔次郎の作品も良かったです。
この兄弟展、見逃さずに観れて良かったです

図録は、厚かったのですが小ぶりで1600円だったので、どうしようかなと迷ったのですが、結局買いませんでしたが、やっぱり買っとけばよかったかなといまだに逡巡中です(苦笑)。
今度、近代美術館に行ったとき、探してみようかな

京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町 TEL:075-761-4111
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)休館日:月曜
スポンサーサイト