映画「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」('10年10本目)

没後400年記念で公開された、バロック期のイタリア人画家、カラヴァッジョの映画を観てきました。
もう冒頭から、たくさんのカラヴァッジョの絵がグルングルン回ります(笑)。
絵が回ると、リアルさが更に増すような。
カラヴァッジョは写実主義者で、いつもモデルを使って絵を描きます。
ただ、モデルに市井の人たちを使って宗教画を描くものですから、絵そのものを高く評価してくれる人もいますが、聖人の顔が一般人の顔ではけしからん!と教会から非難を浴びたりもしてました。
映画は、ローマに出て仲間と出会い、貧困生活を送りながらも絵が認められ、デル・モンテ枢機卿の援助の下、宮殿で絵を描いて暮らせるようになるのですが、いつも腰に剣を差し、絵を描いていない時はけんかばかりしているため、カラヴァッジョに対する評判が悪くなっていきます。
それでも絵はすばらしかったので、庇護者である枢機卿は新教皇に初めて献呈する大切な絵をカラヴァッジョに依頼します。
カラヴァッジョは、庶民である自分の恋人をモデルにして「ロレートの聖母」を描きあげますが、前述のように聖母の顔が庶民であるということで教会側から非難され、そのモデルの恋人の顔にも傷をつけられます。
怒ったカラヴァッジョは、恋人を傷つけたと思しき人物に決闘を申し込み、相手を殺害してしまい殺人者として死刑宣告を受け、逃亡生活を送ります。
周囲の援助のおかげでやっと死刑宣告が取り消され、ローマに帰れるというところで、体が衰弱し亡くなってしまうというストーリーです。
この時代、絵の工房はたくさんあり、自分の絵を工房に持って行って、認められればその工房で絵を描くことができ、さらに売ることもできるというシステムだったんですね。
有名な工房だと有力者の出入りが多く、目を留められやすいため、みんなは有名工房所属になりたがったのでしょう。
有力者の間で、こんなにも絵画の需要が多く、絵画に対する人気が高かったとは知りませんでした。
この映画では、画家とはどういう成り立ちをし、実力のある画家に対してはどんな待遇が得られるのかなどが描かれ、興味深く観れました。
ただ、カラヴァッジョは厚遇され、好きな絵だけを描いていればいい生活を与えられていたにもかかわらず、なぜあれほどケンカばかりしていたのかわかりませんでした。
この映画はドキュメンタリーではなく、フィクションなんですから、カラヴァッジョが何に対して怒っていたのか監督なりの解釈を付加してほしかったです。
そうでないと、カラヴァッジョはただの乱暴者で、あのしんどい生き方は自業自得ということになってしまいます。
(まぁ、本当のところは自業自得なんでしょうが、映画なんですからもう少しカラヴァッジョに肩入れしたいじゃないですか。ねぇ?笑)
あと、映画の中に美術に関係するいろんな人物がでてきてたのが面白かったです。
たとえば、グイド・レーニ作の「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」のベアトリーチェ・チェンチの事件がそのまま出てきます。
映画の中では、カラヴァッジョはベアトリーチェと話したこともあり、彼女の処刑に異議を唱えていたのですがなすすべもなく、見た処刑場面を参考に絵まで描いたことになっています。
他には、ボルゲーゼ枢機卿。
ついこの前「ボルゲーゼ美術館展」をやってたボルゲーゼって、カラヴァッジョと同じ時代の人だったんですね。
映画の中でもボルゲーゼ枢機卿は、美術愛好家でしたよ。
カラヴァッジョの絵、描き方、生活背景、人間関係、当時の風習など、カラヴァッジョのことが複合的に理解できる映画でした。
なかなか面白かったです。美術ファンにオススメの1本です。
カラヴァッジョ 天才画家の光と影 2007年 イタリア・フランス・スペイン・ドイツ 東京テアトル アンジェロ・ロンゴーニ 監督 133分
カラヴァッジョは人の中に神性を見いだし、それを描きだすことができる画家だったんだなぁと思った、Ms・れでぃの勝手な映画採点:72点
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