映画「シャネル&ストラヴィンスキー」('10年9本目)

「シャネル&ストラヴィンスキー」を観てきました。
去年、「ココ・アヴァン・シャネル」を観たのですが、その続きみたいな映画です。
ストーリーは、1913年ストラヴィンスキーの「春の祭典」というバレエ音楽の上演会にシャネルが観に行き、あまりの革新的さに観衆は大ブーイング。そんな中、シャネルだけはストラヴィンスキーの才能に共感し注目していました。
7年後、シャネルはストラヴィンスキーと出会い、自分の別荘にストラヴィンスキー一家全員を招待することで、ストラヴィンスキーに音楽に打ち込める環境を用意するという援助を申し出ます。
ロシア革命で財産がなくなり、肺病を患った妻のために ストラヴィンスキーは申し出を受け、一家全員でシャネルの別荘で生活するようになってから、シャネルとストラヴィンスキーの距離が縮まり、2人は恋に落ちます。
その恋を糧に、シャネルはNo.5の香水を、ストラヴィンスキーは「春の祭典」を完成させるというお話です。
ストーリー的には、なんということもないのですが、シャネルがストラヴィンスキーを援助した理由を、シャネルの生き方に照らし合わせて考えると面白いです。
1913年といえば、シャネルがコルセットなしのシンプルな服を作ろうとしていた時期です。
シャネルは、世の中の常識を覆すような新しい音楽を作ろうとするストラヴィンスキーを自分の「同志」と感じ、民衆が受け入れなくても自分が援助することで、その志が挫折しないように応援したかったのではないでしょうか。
関係の終盤、妻に浮気がばれ、シャネルにも関係を清算されそうになったストラヴィンスキーは、シャネルに「私は芸術家だが、君は洋服屋だ」と言います。
シャネルは、かなり傷ついたでしょうね。
それにしても、芸術家というのはなんとプライドの高い人種なんでしょう。
生活一切をシャネルに依存しておきながら、ストラヴィンスキーの妻でさえ、シャネルに対して通りいっぺんの感謝しかしないんですもの(ストラヴィンスキーとシャネルが恋に落ちる前からですよ)。
才能のある芸術家には、パトロンがつくのは当たり前という考え方だったのでしょうね。
でも、ストラヴィンスキーの「春の祭典」、今聴いても、なんでこれが「春の祭典」なのか理解に苦しみます。
春らしいのは初めの方だけで、あとはサスペンスドラマに使われているような不安を煽り立てる感じの曲で、よく言っても「春の嵐」ぐらいにしか思えませんけどね。
この映画のシャネル役のアナ・ムグラリス、きれいですね~

きついと言えるほどの強さと脆さを併せ持っており、雰囲気がありました~。
マリー・ローランサンのシャネルの絵の雰囲気とも似てる。
シャネルの服がめちゃめちゃ良く似合ってます。シャネルの服って、細身で姿勢の良い人に似合うんですね。
シャネルは、自分に似合う服を作っていたんだと思いました。
衣装は、この映画の見所の1つですよ。
衣装も良かったのですが、私の一押しは別荘のインテリアを含めた内装です。
デザインがものすごくオシャレ!
部屋の壁紙などは、クリムトを彷彿させるようなユーゲントシュティール風で、それに合わせてソファー、ベッドカバー、敷物など、色はモノトーンを中心にして、全てがシャープなデザインで美しい!
本当にあんな別荘があるなら、是非とも見学してみたいものです。
ですが、実際にそこに住むとなると、あまりにも先鋭的なデザインのため、しんどくなるような気がします。
ストラヴィンスキーの妻が、自分の持ち物を使って、落ち着き感をだそうとした気持ちがわかります。
居住用ではなく、観賞用のデザインなんだと思います。
そこに立つシャネルは、クリムトの「ユディット」みたいに見えました。
視覚に訴えるこの映画、ファッション・美術に興味のあるあなたにおススメの映画です

シャネル&ストラヴィンスキー 2009年 フランス ヘキサゴン・ピクチャーズ ヤン・クーネン監督 119分
シャネルの映画、まだ続きができそうな気がする、Ms.れでぃの勝手な映画採点:74点
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