山種美術館「大観と栖鳳」展('10.2.26Fri)

この日最後に行った美術館は、広尾にある山種美術館です。
ここでも雨の中を、緩やかな坂を上っていきます(苦笑)。
雨、嫌やな~、寒いな~と思いながら歩いていくと、美術館が見えてきました。

今回の展覧会は、「大観と栖鳳 東西の日本画」展(入館料1200円)です。

大観と栖鳳の作品だけでなく、展覧会は2章に分かれていて、菱田春草や小林古径などの大観と縁のある東京画檀の作品群、栖鳳がリーダー的役割を果たした京都画壇の上村松園や小野竹喬などの作品群がそれぞれ展示されています。

私は、大観は好きな作品とあまり好きでない作品があるのですが、今回の展覧会ではいいなと思う作品が多かったです。
「燕山の巻」は長い絵巻物で、景色が描いてあるだけで、とくにストーリーがあるわけではないのですが、そこに時間の移ろいが描かれており、自然とストーリーが生まれてきます。
「心神」も墨の濃淡だけで描かれた富士なのですが、威厳がありいい絵だと思いました。
東京画檀の菱田春草の作品は、優しい色使いで、どの作品も観ていてホッとします。
川端龍子の「鳴門」は、青と白の対比が鮮やかで、メリハリのきいた豪快な作品でした。
一方、栖鳳の方は、ポスターやチラシの表紙にもなっている「班猫」、かわいいと一言で表すのとはまた違う、猫が背中の毛づくろいをしている最中に人を認識したような、その一瞬の表情をうまく捉えているのがさすがだと思います。
猫の後に不意に現れた人間が私たち観客なので、栖鳳の「班猫」の絵の場面に私たちが登場している感覚です。
「晩鴉」は、画面の左端の小さなカラスが主題で、その表現がさりげなくて、面白いです。
栖鳳の絵は、物の特徴をものすごくよく掴んでおり、それほど精緻に描かなくてもそれがなんであるかがわかります。
物の形の構成の本質を捉えて描写するのがすごく巧い人なんだなと思います。
京都画壇の方は、もう大好きな画家ばかりが揃っていて、心の中で歓声を上げてしまいます。
山口華楊の動物画は、動物に対する華楊のまなざしが本当に優しくて、いつも心が癒されるような気がします。
今回の「生」もすごく良かったです。
村上華岳の「裸婦図」も久しぶりに観ましたが、やっぱり良い!
足元に咲く1輪の白い花が可憐。
こんな宗教的な気品のある婦人像なのに、なぜ単なる「裸婦図」という名前をつけたのか、村上華岳に聞いてみたい気がします(笑)。
今回の展覧会を観て、東京画壇の特徴は得意な部分を最大限に活かした「特化型」、京都画壇の特徴はいろんな面を総合的に調和させる「総合型」のように思えました。
東京画壇、京都画壇それぞれ良かったのですが、私の好み的にはやっぱり京都画壇の方に軍配が上がるかな。
京都画壇のまろやかで調和の取れた美しさの方が、今の私にとって心地良いのです。
皆さんは、どちらの方がお好きですかね

東京画壇と京都画壇、二つの作品群を比較する展覧会はそんなに多くはありません。
とても興味深い、面白い企画の展覧会でした

山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36 TEL:03-5777-8600
開館時間:10時~17時(入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は開館、翌日火曜日は休館)、展示替え期間、年末年始
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