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東博「長谷川等伯」展('10.2.25 Thu)

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 さて、この日の最後の締めは、東京国立博物館でやっている「没後400年 長谷川等伯」展('10年2月23日~3月22日(月)まで開催中。入館料1500円)です。

  長谷川等伯の作品は、京都の智積院で見たことがあるのですが、正直その時はそんなに感動しなかったのですが、今回の展覧会ではスゴイ!!
 なんか等伯の人生そのものを見せられたような気がします。

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 展覧会の構成も、若い「信春」の時代から、京都に上洛し認められようと意気込んだ時代を経て、それが成功し、晩年は、まるで自分の人生そのものを整理していくがごとくシンプルな色使いの水墨画に傾倒していく。
 その完成版として、国宝「松林図屏風」が最後の展示になっています。

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 「松林図屏風」、私は近視なので、基本的に近寄って見るんですが、私はこれを雨の中の松林図だと思っていたんですよね。
 ですが、解説では霧の中だというので、ちょっと離れて見ると確かに霧なんです。
 でも、やっぱりすごく湿り気を感じます。
 霧といっても、土砂降りの雨の後、水蒸気が残ってるって様子で、迫力ある筆致で描かれている松林がなんか頼りなげで、少し寂寥感を感じてしまいました。

 等伯は、その時その時で素晴らしい絵を描いているのですが、作品全体を通して見ると、等伯の絵の魅力は線の多彩さだと思われます。
 大胆で荒々しい線を描いたかと思うと、優美で繊細な筆致も見せます
 同じ人が描いているとは思えないほどです。
 この対比が、等伯の絵を印象付けるものにしているのかもしれません。

 筆致もそうなんですが、彩色もあれだけ豪華な色を駆使して描いていたにもかかわらず、晩年は水墨画に傾倒。
 これは一見よくあるように思えますが、雪舟の流行った室町時代ならいざしらず、豪華絢爛たる桃山文化を引きずっている戦国時代から江戸初期の時代に、水墨画が人気があったとはあまり思えないんですよね。
 この頃は、人のために描くというよりは、自分のために描くといった心持ちだったのかなと思ってしまいました。

 あと今回の展覧会を見て、等伯を理解する上で見逃すわけにいかないと思ったのは宗教との関わり。
 等伯が上洛する時や、上洛後いろいろ世話をしたのが、日蓮宗等の法華信仰だったんですね。

 以前、京博で「日蓮と法華の名宝」展という展覧会を観たのですが(東京でも開催したのかな?)、その時は「法華信仰が京都の芸術家に広まっており、町衆文化の形成に一役買った」といっても、関連性がいまいち理解できず、よくわからない展覧会だなと思っていたのですが、今回の等伯の展覧会を観て、芸術家の活躍の場が寺社仏閣に多く、その関係で宗教と芸術のつながりが強くなったのだとやっと理解できました。
 日蓮宗は、等伯など芸術家のバックアップをよくしていたのでしょうね。

 等伯の「柳橋水車図屏風」は、金地にデザイン的な絵柄で、なんか琳派の原点をみたような気がしました。
 宗教面から考えても、琳派は等伯の影響を受けていたかもしれないと思うのは私だけでしょうか?

 時の移ろいの喜びも悲しみも作品に滲み出てると感じたのは、80点もの作品を年代を追って一堂に観ることができたからだと思います。 
 この展覧会は京博にも巡回してきます('10.4.10~5.9まで)。
 今回は、いち早く東京で観てしまいましたが、京都でももう一度観たいと思った見応えたっぷりの展覧会でした

東京国立博物館
 住所:東京都台東区上野公園13-9 TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
 開館時間:9時半~17時(入館は30分前まで。毎週金・土曜日、11/2は21時まで開館。時期により開館時間の変更あり)
 休館日:月曜(ただし月曜日が祝日または振替休日の場合は開館し、翌火曜日に休館、GW期間とお盆期間中(8月13日~8月15日)は、原則として無休)、年末年始(12月26日~1月1日。毎年変動あり)
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