「山本六三展」兵庫県立美術館

兵庫県立美術館に行った時、コレクション展のこの看板に一目で惹きつけられました。
男鹿和雄展を観た後、いつもならじっくり観る小磯良平や金山平三の常設コレクションを駆け足で見て、急いでこの「山本六三(やまもとむつみ)」展の部屋に入りました。

部屋に入って観てみると、
なんともいえない魅力的な作品の数々!

展覧会のサブタイトルに「幻想とエロス」と書かれており、なるほど山本六三の作品の中には裸体が多く描かれています。
ですが、エロスはあまり感じられません。それは、モデルに表情が感じられないからだと思います。
といっても、表情がないわけではありません。でも、そこに描かれてる表情からは確たる感情を読み取れないのです。
かといって、人形のような冷たさもありません。なので山本の作品の中の人物は、人間と人形の中間のように見えます。
その中間性というか、神秘さが山本作品の魅力の一つなのかもしれません。
人間と人形、男性と女性、天使と悪魔、昼と夜、内と外、生と死、山本氏の作品は相反するものを同時に描き出そうとしているように見えます。
人間は相反する面を多く内包する存在ですが、これらの境界線ははっきりしていません。
私はこれらの境界の謎を知りたくて、その一端が垣間見えるものに魅力を感じるのかもしれません。
謎といえば、髑髏が「死を忘れるな(メメント・モリ)」のメタファであるように、山本氏の作品には隠喩がたくさん含まれているように思えます。
たびたび出てくる白い手袋なども何か意味がありそうですが、私にはわかりません。
作品にちりばめられている隠喩がわかれば、もっと面白く作品が観れるんだろうなと思います。
今回の展覧会で初めてこの画家の名前を知り、初めて作品を観たのですが、初期の作品を除いて、あまり日本人が描いた絵とは思えません。
この画家の作品は、ベルギーの象徴主義やシュールレアリスムのクノップフ、マグリット、デルヴォーを連想させます。
また、看板の絵「マリオネットの吊るされた棚」などは、四谷シモンの作品にも通じるものがあるように思えます。
今まで知ってる人には熱烈に愛好されていたそうですが、美術館などではあまり紹介されてこなかったこの「山本六三」展、約80点のまとまった展示になっています。
2010年3月14日(日)までの開催です。
興味がおありの方は是非観に行ってみてください。
そして、もし作品の中の隠喩の意味がわかれば教えてくださいね

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